番外編5 | ナノ


5th secret

※黒→火要素あり

黒子テツヤの日課の一つとして、自身の光であり相棒でもある火神と一緒に登校、休日ならば部活に向かうというものがある。これはいつか火神の心に触れ、彼を支える存在になりたいと思い、始めたことだ。
とはいえ、あの日から火神を人生の光にした黒子にとってこの日課は下心が約半分を占めていた。当の火神は普段は野生の勘が冴え渡る癖に恋心に関してだけは飛び抜けて鈍感だった。話に聞けば、彼は趣味に関連して恋愛漫画や恋愛小説を読んでいるらしいがそれで得た知識は全く活かせていなかった。
だが、火神と最低あと二年は一緒なのだ。相棒という立場で誠凛において黒子と火神はとても近しい関係にある。まずは親友としての仲を築き、そして交遊の皮を被った外泊というイベントを起こす。あとは既成事実を作るまでだ。
素敵な未来予想図にふふふと無表情で笑いながら黒子は目的の階へと足を進めた。今は練習開始二時間前。運が良ければ火神の美味しい手料理にありついてから練習に行けるだろう。
そんなことを考えて機嫌良く階段を昇りきれば、目の前には広がるのは今やもう見慣れた通路。だが、そこには普段この場にいない存在がいた。

「キャプテン?」

「黒子?」

日向順平。二面性を持つ誠凛バスケ部の要であり、超が付くほどの部員フリークだ。練習や試合時以外はリコと並んでバスケ部と火神大我の保護者のような存在である彼だが、流石に家まで押し掛けるような人物ではなかった筈である。

「おはようございます。火神くんに何かご用ですか?」

「あー、そうか。お前ら確かいつも一緒に来てたな……、ってちょっと待て!今ドアを開けるな!!」

探りを入れつついつもの癖で黒子がドアノブに手をかけると、日向が慌ててその手を押さえた。思わず黒子はむっとする。

「何ですか。鍵なら火神くんはボクが来る時間帯には開けてくれているので別に無断じゃないですよ」

「いや、そうじゃなくてな、うん。ちょっと今は中でカントクと火神が用事してるから入ったらまずいというか、俺が殺されるというか」

「……?どういう意味ですか?」

リコも来ているという新たな情報に黒子は驚く。そして心によぎる悪い予感。火神とリコが部屋で何かをしていることに良からぬ想像をしているのではない。この保護者コンビが動いているという事態が火神に何かあったということを示しているのだ。
怪訝な顔から焦った顔に変わった黒子を見て日向もどう説明したものかと頭を掻く。そうして口をもごもごとしていると、突然玄関のドアが開いた。

「キャプテン!助けてくれです!!」

「待ちなさい火神くん!今着けたのも似合ってるけど試しにこっちの水玉のやつも……」

飛び出た火神が日向に一生懸命手を伸ばす。その格好は訪問当初のTシャツにハーフパンツではなく厚い生地のスウェットだった。それでもメンズであるためか今の火神には少しサイズが大きい。そのスウェットの襟元が火神の後ろから伸びる手によって引っ張られ、やや胸元から肩口にかけてが日向と黒子の目に入った。

「白のレース……」

呟いた黒子の言葉に日向の顔が真っ赤に染まる。サイズはリコの情報で選んだとはいえ、下着の自体のデザインは日向が選んだものだった。つまり、あまり意識はしないように選んだにしてもそのデザインは日向の好みであるということだ。
日向が買ったことを黒子は知らないはずだが、その言葉はまるで自分の隠しているエロ本が遊びに来た友人達に見つかった時のような羞恥心を生んだ。

そして、火神の伸ばした手は日向に届くことなく、その身は部屋へと引き戻される。再びドアがバタンと音を立てた直後、火神の悲鳴が扉越しに木霊した。
憤死しそうな日向に対して黒子は無言だった。彼の頭の中に巡るのは疑問と驚愕の嵐。
胸があった。服から覗いたのは間違いなく女性下着。いつもより長い睫毛と細い腕。女性特有の高い声。最後に彼、いや彼女の蒸気した頬。

「ちょっと市役所に行って来ます」

「ちょっと待て黒子!お前の気持ちは知ってるが早まるな!」

黒子テツヤ16歳。人生二度目の脳内オーバーフローを起こしたことに後悔はなかった。

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130127

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