3rd secret
※ちょっと下品
「遂に来たわね……」
「ああ……」
とあるマンションの前に立つ二つの影。その片方の男の両手のには紙袋。互いに顔を見合わせて何かを決意したように頷く。そして無言で二人の人間、相田リコと日向順平は歩を進めた。
階段を昇り辿り着いたのはとある部屋の前。表札には火神大我の文字。
リコは深呼吸を一度して、ドア横に設置されているインターホンへと手を伸ばした。ドア越しにチャイムが響く。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらく待つが、ドアノブが動くこともなければ、向かって来る足音すらも聞こえない。まさか部屋にいないのかとリコがドアノブに手をかけようとすれば、少しだけドアが空いた。驚いて一歩下がれば隙間からこちらを見るのは頭から布団を被った火神、なのだろうか。
布団を被り、こちらからは顔すら良く見えないほどめいっぱいに重なる部分を握り締めている。
「火神くん……?」
「…………」
リコが確認するが火神は黙ったままだ。日向も心配したように声をかける。
「火神、何があった?」
リコは火神と直接電話をしたため事情をしっているが、日向には話していない。『女の子』になってしまっただなんて言えるわけがない。両手の紙袋に入っているのは大小さまざまなナプキンに織物シート、そしてショーツと痛み止め。やっぱり来るなと玄関先で追い返そうとしたが後輩の危機に何が何でも帰ろうとしない日向を外で待たせて近くのスーパーで買って来たものだ。日向には中身を見たらシュートを階段カウント制にしてワンマン連続速攻100本やらすときつく脅してある。これだけ買い揃えおきながら、男にナプキンってどうやって着けるんだろうとレクチャーの仕方にリコは不安を抱えていた。
「火神くん、電話でも言ったけどお邪魔しても大丈夫?」
火神がビクリと震える。余ほどショックだったのだろう。アレは女の子でも初めての時は驚くものだ。
「カントク……」
火神が小さくリコを呼べば、リコは不安にさせないよう優しく微笑んだ。
「カントクぅ!!」
勢い良くドアが開き火神が飛び出す。そしてリコに抱き着いた。落ちる布団。うえぇ、と幼い子どもの様に泣く火神。いつもの彼ならあり得ない行動だ。だが、リコはそんなことなど微塵も気にならなかった。
口元の辺りに当たりのは柔らかい感触。リコを抱えるのは筋肉がありながらもしなやかでキメ細かい肌を持つ腕。
そっちの意味か!!
リコは自身の誤りを理解する。火神大我は女の子の日がきたのではない、女の子になってしまったのだと。
「か……が、み……おま……」
「日向くんは見ちゃ駄目ぇぇぇぇ!!」
上半身はノーブラでシャツ一枚、下半身にずり落ちそうな短パンを履く火神を引き剥がし一瞬で布団を被せ、リコの渾身の右ストレートが日向の顔面に決まった。
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130112
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