extra secret
【本編前のかがみんの生活を覗こう!】
*起床編
太陽が日の出する時間。火神大我の一日はいつもこの瞬間から始まる。
目覚まし時計の短針と長針はそれぞれ5と0の数字を指す。鳴り響くアラームを止めたのはモゾリと布団から出てきた一本の腕。その体勢のまま約10秒程静止した後、火神は活動を始めた。
めくれる布団に起き上がる190cmの巨体。そして、その脇に抱えられているのはしま*ろうのぬいぐるみ。
そう、し*じろうのぬいぐるみ。
黄色のボディに黒い縞模様、青いツナギ。断じてタイ*ーボードの虎ではない。
排便時に「ウンパッパ!」と愉快に歌いながら排泄してみたり、出したモノに向かってバイバイしてみたり、その後「パンパンぱんつま〜ん」とパンツ一丁で自己表現をするといったパフォーマンスをいたすあの虎。
火神はそれを当たり前のように枕元に座らせ、自分の寝相によってやや乱れたベッドラグのぬいぐるみたちの位置を直してやる。ついでに自分が作り、名付けたぬいぐるみ一体一体におはようの挨拶と一言言葉をかけた。
「おはようマリアンヌ。今日は晴れたぞ。良い天気だな」
初めはサーモンピンクのボディに白いフリルのリボンが似合ううさぎさんに。
「おはようバーボン。相変わらずcuteな鼻とたてがみだ」
次はミカン色のボディにつぶらな瞳、少し潰れた鼻がチャームポイントのライオンさんに。
そうして次々と人形たちに挨拶をし、20体目である三葉虫さんのヌビラヒムイモビッチまで行くと火神の最初の日課が終わる。本当はクローゼットの奥に保存してある子達にも挨拶したいところなのだが、それをするとなると後一時間は早く起きなければならない。それは流石の火神でも骨が折れる。
クローゼットを引き、火神は顔を引き締める。そして、何かに耐えるような表情で彼は口を開いた。
「お前ら、ここから出せなくてごめんな……。けど……俺は、お前らのことが大好きだ!みんなおはよう!」
クローゼットに向かって熱烈な愛の言葉を叫ぶ190cmの男の姿は、端(はた)から見るとかなり異質であった。
*出発編
火神大我が家を出る時間はかなり早い。その理由はやはり火神が所属しているバスケ部にあった。朝練である。
世間には朝ゆっくりできない、朝から汗をかきたくないなど朝練に対する不満を抱く学生もいるが、火神はどうしようもない程バスケが大好きである。そのため、バスケが楽しくて堪らない、時間の許す限りバスケをしたいという気持ちが大きく朝練に義務感や苦痛を抱くことはなかった。
最近は落ち着きつつあるどこぞのプレイスタイルや性格が似た「俺にry)」などと抜かす青いザリガニ好きとは大違いだ。とは言え、青峰の本質は火神と同じであり、中学時代の出来事によってそこにちょいと爆弾がぶち込まれたことでひん曲がりきってしまったのだからしょうがない部分もあった。
おかしく思われない程度に可愛く盛った弁当をお手製のランチバッグに入れ、誠凛バスケ部のエナメルバックを肩にかけて玄関へ向かう。ちなみに今日の工夫はタコさん、カニさんウインナー、ウサギさんリンゴだ。スタンダードなものではあるが、ベビーピンク、ライトグリーン、イエローのシリコン製おかず容器で彩り良くレイアウトしてある。
向かった玄関ではミニサボテンンの花子が出迎えた。そのバスケットボールのような体幹とは対称的な枝のくびれは一種のアートであると火神は考えている。
また、空気をも切り裂かんとする鋭利な針へと進化した葉は『火神家の鉄処女(アイアンメイデン)」の名を欲しいがままにしていた。
花子に適量の水をやり、靴を履く。そして扉を開いて一度彼は振り返った。
「行ってきます」
今日も最高の一日になりますように、だなんて可愛らしい事を青空に祈りながら、火神は一歩外へ踏み出した。
その後、曲がり角でぶつかるパンをくわえた少女と自転車の青年を偶然見かけ、脳内ビックバンが発生したことは誰も知らない。
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121224
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