八話 | ナノ




「アマ公!目にもの見せてやんなァ!!」

イッスンが声をあげると、アマテラスが大きく吠えた。目の前に迫るのは三度目の火の波。

しかし、アマテラスが尾をスルリと動かせば突風が生まれる。火の妖怪相手ならばこれで体に纏う炎も吹き飛ばすのだが、相手の人間は奇怪なことに体そのものが炎なのか、未だに炎が揺らめいていた。その様子にイッスンは手に汗を握る。

「こりゃァ、八犬士やオキクルミにも負けちゃいねェ……。油断すんなよアマ公!」

注意を促せば、今度は自身の体が相手へ引寄せられる感覚。来たか、とイッスンが思った時には相手の懐まで潜り込んでいた。そして、いきなり飛んでやって来た自分に驚いた様子の燃え盛る相手に、イッスンは怯むことなく電光丸を抜いた。

「イッスン様を舐めんなよォ!」

刃を走らせると、その衝撃に相手がよろめく。そうして頂けるものを頂き、速やかにアマテラスの元へと帰った。
次に体を引寄せられるは青い鳥の懐。その鳥は飛び込んで来る自身を避けようと上空高くに上がるが、筆しらべを終えた今にはもう遅いことだ。同様に電光丸を振り抜けば舞うのは青く美しい羽根。それを片手でひっ掴み、再び特等席へと帰った。

スリの手袋。いかなる相手であろうと対象へアマテラスが筆を走らせればそこへイッスンが向かい、電光丸で一撃を加える。
一見大したことのないように思えるが、羅城門百鬼夜行では自身を舐めきった妖怪共に力を見せつけたものだ。たかが小さな虫の攻撃と思えば痛い目に合う。

それにしてもタフな相手だ。イッスンは感心した。
大概の小物妖怪はこの初撃で花に還る。にも関わらず、彼らはまだまだ体力がありそうである。しかし、攻撃における役目を終えた今、イッスンにできるのは言葉による戦闘の補助しか残っていない。

アマ公、後はお前の仕事だ、と唇をひと舐めして、イッスンは緊張を誤魔化した。

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130106

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