参
「っぶっええええ!!何だこりゃ!!?」
「うわ!おれのお気に入りのシャツが!これぜってぇ落ちねぇ!!」
「どうせ垢で汚れてんのに綺麗も糞もあるか!!」
「口が、口が、苦ぇ!!」
「うげ!目に入った!ひぃ、滲(し)みる!」
「バカ!早く水で流せ!!」
「ぐおおおお!海水は余計滲みる!!」
「おれはしょっぺぇ!!」
クルー、移動艇、沈みゆく敵船、敵クルー全てが黒い何かを滴らせる。
「テメェら落ち着きやがれ!毒か何かかもしれねぇ!見張り!ドクターとナースを呼べ!」
パニックになったクルー達。中には謎の液体を落とそうと海に飛び込む者もいた。
突然の事態にマルコ自身も混乱しながら指示を出すが、いつものおかしな語尾は消え去り彼の美しく青い体も今は黒く染まっていた。
「マルコォ!モビーが!!」
エースの悲痛な叫びが聞こえる。
言わなくても分かってるよい!とマルコは指示を出しながら叫び返した。白ひげ海賊団の家であるモビーディック号も今やただの黒船だ。
「オヤジは船内にいたから無事だ!!」
真っ黒なモビーディック号の船縁から、体に着いた黒い液体を手で払いながらジョズが身を乗り出して報告する。その内容に、みんなが心が少しだけ安堵に包まれた。
「テメェら!周囲を警戒しろよい!船の見張りの数を増やせ!怪しいことは全部報告しろい!!」
一体誰が?殺気を隠しもしないマルコに何人かは怖じ気づきながらも、大きく返事をする。
正体不明の敵は恐ろしいが、彼らだって愛する家族や家をこのような事態に陥らせた者を許せるはずが無かった。
その時、ポツリと雨が一粒頬を打った。
「雨か……」
運が良いのか悪いのか。しかし、これで少しはこの謎の液体も流されるだろうとマルコは空を見上げた。
「雨雲がねぇ……」
誰かがそう呟いたと同時に、雲一つない空から今までにない豪雨が彼らを襲った。
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121224
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