おまけ1 | ナノ


half tame

【アメフトの試合ビデオを見よう!】

某日。誠凛高校体育館。

「ちょっとテレビ借りるわよ」

「何だそれ?」

ふふん、と笑うリコの片手にはビデオカメラがあった。
午前の練習を終えて着替える彼らに恥じらうことなく、堂々と部室に来た彼女は部屋の隅にあるテレビとカメラの電源をつけ、接続を行う。

「小早川くん達の試合ビデオよ。青米先生が一本だけ持っていたからお願いしたの」

「へぇ、何で借りたんだ?」

カメラテープのケースには『泥門対太陽』の文字。鼻歌を歌いながら準備する彼女を眺めつつ、少し気になった日向達も見やすいようにテレビの前へと移動する。
すると、リコが遅れて先ほどの日向の問いに答えた。

「ほら、この前小早川くん凄かったでしょ?それで少しアメフトに興味出ちゃって。正邦が古武術取り入れているみたいに何か動きからトレーニングのヒントないかなって思ったのよ。しかもこのビデオ集音機能が凄くって選手同士の会話も撮れちゃうらしいからその機能もどれくらいか見ようと思ったわけ」

「理由はまあ、ビデオの機能に関しては偵察には持ってこいだな」

つまり、試合中の指示のポイントや傾向の分析もできるということだ。今度から他校試合を見るときに借りるかと日向がぼんやり考えていると、視聴の準備が整った。

アメフトは一体どんな試合なのだろうか。日向達は興味を、リコワクワクとした期待を胸にはリモコンの再生ボタンを押した。

《テメーのおふくろに泣いて頼まれてなァ。高校生にもなってママンのオッパイ飲むのやめさせてって。そのゲロ臭ぇ口いっぱいに砂ねじこんで乳離れさせてやるよ》

「…………」

ピッっと電子音が響き画面上の選手達がマスゲームのように巻き戻されていく。部室内は何とも言えない沈黙で包まれていた。

「……ごめん。巻き戻すの忘れてたわ」

「……そうか」

気まずい雰囲気の中、木吉が誰に聞く訳でもなくマイペースに呟いた。

「さっきのやつ誰が言ったんだろうなぁ。審判に聞かれたら即退場くらいそうだけど大丈夫だったのか?」

「……そうだなー、だれだろうなー」

絶対『ヒル魔先輩』だ。
誰も言葉にしなかったが、首を傾る木吉以外の全員の答えが満場一致した。

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121224

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