5th game
ペタリ、と人とは違う足音に最初に気付いたのは火神だった。そして、その音に振り向いた瞬間彼は後悔した。
「…………」
恐怖で悲鳴は喉の奥に消える。彼の視線の先には犬がいた。それも、二号なんかとは比較にもならないようなレベルの凶暴さを醸し出していた。その姿は例えるならば地獄の門番といわれるケロベロスだ。
そして、目の前の猛犬と目を合った。
くろこたすけて、と消え入りそうになりながら相棒に助けを求め、一番近くにいた人物の服を握り締めて火神はとうとう腰を抜かした。
「どわっ!?おま、火神俺を転(こ)かす気か!って、うわぁっ!!」
火神に巻き込まれた降旗も巨大な犬の存在に気付き悲鳴をあげる。それに続いて他の者達も続々と火神の方へ振り向いた。
「火神くん大丈夫ですか?」
「くろ、くろこ……」
「デカい犬だなぁ。二号が食べられちゃいそう」
腰を抜かした火神に駆け寄り、パニックに陥った彼を黒子が慰める。動物には真っ先に触りに向かう流石の小金井も明らかに凶暴なビジュアルを持つ犬には自ら怪我をしにいくようなことはしない。
火神を恐慌状態に陥らせた犬はというと、鼻を大きく一つ鳴らすとセナ達の元へと向かい、少し集団から離れた位置で寝始めた。
「もしかして小早川くん達のところの子なのかしら……」
「さあ……」
震える火神を犬が見えない位置に運び、更に人でバリケードを作っていると、犬がやって来たであろう方向に人影見えた。
途端に泥門バスケ部の顔色が悪くなる。早く出発しましょう、と部員の一人が二年の主将へ必死に声をかけるが、忘れ物を取りに体育館へ戻っている者がいるためにそうもいかない。
そして、そんなバスケ部員達の心境など知らんとばかりに『彼』はやって来た。
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121224
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