五話 | ナノ


5th game

「あと何分だ!?」

「あと一分!」

「ヤバさMAX!」

玄関口でモン太が披露したパスセンスは被害に遭わせた人物への謝罪に濡らした床の掃除、掃除道具の返却と貴重な時間を消費することとなった。
その後は全速力で二階の観客席へと向かい、誠凛が荷物を集めている席を探して自分達の荷物を近くに置いてようやく体育館に足を向けているところだ。
とにかく『遅刻だけは駄目』と彼らを突き動かす理由は、単に迷惑をかけてはいけないという責任感からくるものではない。

思い出されるのは関東大会抽選会。「遅刻は死ね」という死刑宣告とともに体を襲った爆風と熱さは今もはっきりと思い出せる。その経験は、『遅刻=死』という考えをセナ達の心に刻み込んだのである。

そして、必死の頑張りの末にどんどん近付いて来る入り口にゴールはもうすぐだと自身に鞭を打つが、その反対に少しの安堵が心に生まれた。
だからか、焦る心と体に慣れない床での全力疾走といった絡み合った要因は予想外のアクシデントを引き起こした。

結果から言うと、ゴールの体育館に一歩踏み入れた瞬間にセナは盛大に転んだのである。そして、足が速いため先に走るセナを少し後追いする形になっていたモン太もセナに躓いた。
芝や砂とは違い、木製の床での転倒は体育館に大きな衝撃音を響かせた。
集まる沢山の視線をセナが感じていると、転んだセナ達に気付いたリコが慌てた様子で駆け寄ってくるのが目に入る。心配をかけてはいけないと立ち上がり、、周囲を見回すとこちらに注目している沢山の人と目が合った。すると、その内の一人の金髪のやたらと顔の良い青年がこちらを指さして声を上げた。

「あーーっ!!『ジェット小僧』!!!!」

「はい?」

ジェット小僧って何、と疑問を感じつつ、何だかとんでもないところに自分は手伝いに来てしまったのではないかと今さらながら気付いたセナだった。

こうして彼らの波乱万丈な二日間は幕を上げたのである。

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121224

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