十二話 | ナノ


12th game

「今日は火神くんの落とし物といい、1on1といいお疲れ様です」
「急な事には慣れてるつもりだったけど、流石にこんな一日になるとは思わなかったよ……」

 困ったようにセナは笑う。帰り道、今日の礼に駅まで見送ると火神と黒子に言われたセナ達は、今日の事を振り返りながら帰っていた。

「正直、人は見かけによらないという場面を初めて見ました」
「それは黒子が言える立場じゃねぇよ」

 どういうことですか、と不満顔の黒子に火神はそのままの意味だよ、と道中のコンビニで買ったパンをかじる。そんな火神と黒子のやり取りにセナは思わず笑いが零れた。不貞腐れた様子の黒子だったが、その顔は相変わらず無表情だ。
 そうして歩いていくと駅が見えてきた。もうすぐお別れの時間だ。

「小早川くん」

 黒子が急に歩くのをやめ、セナ達を呼び止める。振り向いて見えたその表情は真剣だった。火神もこの一年間の付き合いからか、黒子が何を訊こうとしているのか察している様子だ。

「キミにとって、アメフトとは、……仲間とは何ですか?」

 何かに期待する気持ちと不安を抱えた気持ちが混ざった目が二人を射抜く。きっと黒子にとって重要な質問なんだろう。セナはモン太と顔を少し見合せた後、迷うことなく真摯に答えた。

「アメフトは、どんなに運動が出来たって一人じゃ絶対勝てない。皆で信頼しあって、作戦を立てて、勝つために全力でぶつかり合うスポーツだと思うんだ。ラインの人たちは僕達バックスの道が拓けることを信じて、逆に僕達はラインの人と同じバックスの人達を信じてプレーする。フィールドにいる人だけじゃない、ベンチの人やベンチにすら入れなかった人、応援席で応援してくれている人、そして今まで戦ったライバル、皆が繋がって戦うことができるんだ。……僕にとってのアメフトは皆で一つになって戦うもので、かけがえのないものかな」
「俺達はいつでも信頼MAX! の仲間でライバルだからな!」

 モン太と肩を組む。仲間で、ライバルで、親友。セナにとってのアメフトは泥臭くてもチーム全員であがき、勝利に挑む。最初は恐ろしくて仕方なかった『彼』はどうしようもなく冷酷で勝利に貪欲であったけれど、そのために『彼』がセナに教えたアメフトは、セナが楽しいと思ったアメフトはそれだ。
 そうですか、と満足したように黒子は微笑む。

「小早川くん、キミはアメフトが好きですか?」

 スポーツショップでセナが黒子にかけた言葉を、今度は黒子が口にする。

「うん、大好き! アメフトも、チームの皆も、ライバルの人たちも!」

 皆最高のプレイヤーだよ、とセナは満面の笑みで答えた。

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121224

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