2nd game
「ここで合ってるのかな……」
とうとうここまで来てしまった。手にじわりと汗を滲ませ、セナは携帯の地図アプリに表示された現在地アイコンと目の前の建物を見比べた。校門に並ぶのは『私立誠凛高等学校』の文字。
「やっぱ新しい学校はキレイだな。バスケ部だっけか? じゃあ体育館だろ」
緊張気味のセナとは正反対にモン太はと呑気な様子だ。
なぜ、二人が無関係な学校の校門の事の前に佇んでいるのかというと、事の始まりは雑誌コーナーで出会った空色の彼……彼の相棒が『黒子』と呼んでいた人物と別れた後であった。目的の商品の支払いに向かうモン太に着いて会計コーナーへ足を運んだ時の事だ。セナがモン太の足下に落ちていた学生証を偶然見つけ、拾い上げて持ち主を確認すると、なんと別れ際に見かけた彼の相棒の顔写真が『火神大我』という名前とともに記載されていたのである。
それを拾った後、セナは黒子との出会いやその相棒の火神についてモン太に話した。そして、本人へ届けるべきか、それとも店に預けるべきか迷った結果、いくら常連かもしれないとはいえ、スポーツショップに頻繁に足を運ばないだろうという事や学校によっては学生証を携帯していないと校則違反になるかもしれないという事、最後にこのご時世『学割』というサービスが多い中、学生証がないと不便だろうという理由から届けることになったのだ。
正直そんなことしなくとも、店に預ければ学校へ連絡が向かうのが一般的だが、純粋で少しお馬鹿な気がある二人はそんなことを考えもしなかった。というより、モン太にいたっては火神大我、黒子という人物が通う学校が誠凛という新設校であるため、ただ単純に学校を見てみたいという好奇心も含んでいる。
学生証を届けると決めた後、早速誠凛に向かおうと意気込むモン太に、持ち主である火神は黒子を探している際、練習であるようなことを言っていたことを話すと、それなら練習後近くに訪ねた方が迷惑にならないのではという事になった。実際にセナと黒子が出会ったのは10時過ぎの出来事であったし、セナ達は知る筈もないが、今日の誠凛バスケ部の練習開始時間は昼の12時と彼らの読みは外れていなかった。
現在の時刻は3時半。少し早すぎたかもしれないが、そうだとしても練習は佳境に入り体力を消耗しやすいために、1セットごとこまめに休憩を挟んでいることも考えられる。狙いはそこのタイミングだ。
そう予測を立て、二人は偵察とは違う緊張感を抱えて、何の繋がりもない誠凛高校に一歩足を踏み入れた。
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121224
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