「恋だろ、それ」
何かめっちゃもやもやすんねん、その言葉から始まった相談に、古くからの友人は事も無げに言ってみせ、退屈そうにグラスを回した。 氷がカラリと涼しげな音を立てる。 まさかお前からそんな話が聞けるなんてねえ。 どこか嬉しそうに目を細めたフランシスはまたくるくるとグラスを回し、酒を煽っていく。今日はペースが速い。
「ちゃんと聞いとる?俺ごっつ真剣に悩んどるんやで」 「うん、聞いてるよー。つまりお前はその生徒が好きなんでしょ?手出しちゃえばー?」
──あかん、全然話にならんわ。 フランシスが酔い潰れる前にそろそろ会計を済ませてしまおうか、と携帯で時刻を確認しながら席を立った。 終電まであと少ししかない。
「なあ、もうお勘定済ませてええ?終電なくなってまうわ」 「えー、お兄さんちに泊まればいいじゃーん」
明日ちょっとキツい子が来るけど。 また女かいな。相変わらずの友人の様子に苦笑しながら財布から紙幣を2枚出し、カウンターに置く。
「はよ起きいや。お前引きずって歩くなんて重労働したないねん」 「はーい」 「素直でよろしい。ほら、行くで」
それから、ぐでんぐでんに酔っ払ったフランシスとタクシーに乗り込み、無駄に大きな家に入ってソファに座ったところまでは覚えている。 が、その後の記憶があまりない。 平日の疲れが溜まっていて泥のように眠ってしまったのか、それともまた飲んだのだろうか。 どちらにせよ、目覚めたときにはもう日が高く昇っていた。
(頭痛い…) (お前昨夜ごっつ飲んどったで。ぐでんぐでんやったわ) (うわー…今日アーサーがどつきに来んのに…)
2011.04.18
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