ヴゥン、重い音を立てながら読み込んだそれは、正直意味のわからないものだった。 ただ、質問事項がいくつか出て、それに答えて、おわり。 ”もしかして:ウイルス”なんてワードが頭に浮かんだが、そんなこともなさそうで。 よくわからないまま、朝。
「おはよ」 「……は、」
驚くとか笑うとか、そういう次元じゃない。パソコンがひとりでに喋り出した、など誰が信じてくれるというのだ。
「…夢か」 「夢じゃないってーの」
なにあんた、辛気臭い顔しちゃって。 モニタに映った少女の顔が嘲るように歪む。失礼なソフトだ。アンインストールしてやろうか。
「なんなんですか、あなた」 「昨日拾われたソフトですけどなにか?」
なにか?じゃない。こんなもの聞いたことがない。ひとりでに喋るソフトなんて。しかも、会話ができる、ときた。
「でもさ、あんたが私を起動したってことは、あんたがマスター?ご主人?ってことでしょ?」 「…はあ…」
そうなんですか。としか言いようがない。 ご主人なんて言われてもテンションが上がらない。変なソフトを拾ってしまった。
「ふーん、本田菊、ね」 「何勝手に人のデータ覗いてるんですか」 「いいじゃん。よろしく、菊」
パッケージにあるような可愛らしい笑顔で、彼女が笑う。得体の知れない存在との共同生活の始まりに、大きく溜息を吐いた。
________ ひきこもりとアホソフトとの出会い。 これからよくある展開になっていきます。
2014.02.21
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