Yankee go home!







つまんないよ。
本から顔を上げると、向かいのソファに座って足をばたつかせたアルフレッドを、アーサーが私の隣から注意しているのが見えた。その間にもアルフレッドはばたばたしていて、最近替えたばかりの気に入りの絨毯にぱらぱらとスナック菓子の欠片が落ちる。
ああ、くそ、絨毯だけじゃなくてソファにもいっぱいついてんじゃねえか。掃除する俺たちの身にもなれよ。
ぶつくさと言いながらもアルフレッドの服についた欠片をほろう彼に微笑ましい気持ちになっていると、一変して低い声が耳に届いた。

「で、今日は何の用だ?」

まさか、わざわざ俺たちの休日を邪魔しに来たわけじゃねえよな?
二人の休日が被っている日になると必ずと言っていいほどにやってくるアルフレッドに嫌味ったらしく言って、私の腰に腕を回す。確か、前回はアイスが食べたいと言って来たし、前々回はギターを弾いていたら急に来たくなったと言っていた。今回はどう言うのだろう。
スナック菓子を食べ終わったのか、今度は籠の中のアーサーのスコーンを器用に除けながら、昔とは違って邪気たっぷりの笑顔がこちらを見た。

「なまえを君から守りに来たんだぞ!」
「は?」

アルフレッドが身を乗り出して私の手に口付ける。みし、台にされたテーブルの抗議の音が聞こえた。隣の空気の温度がどんどん下がっていく。

「アーサー、アルにも悪気はないから…っ!」

言葉を塞ぐように、唇の間から舌が割り込んでくる。いつものように互いの舌を絡ませるだけではなく、上顎をねっとりと舐め上げた。アルフレッドがいるのに、という言葉を発することも許されず、理性がぐずぐずに蕩けてくる。そこが弱いと知っているくせに、執拗に攻めてきて、目の前にまだそういう知識に疎そうな子がいるにも関わらずスカートに手が入り込んだ。

「だ、めよ…アルに、見えちゃう」
「見せてんだよ」

性教育、ちゃんとしてなかったもんな?
目の前で笑いかけられたアルフレッドが、顔を赤らめていくのが見えた。




─Yankee go home!─


(帰ってもいいぞ?なまえはガキには刺激が強いかもしれないからな)
(こ、こんなの大丈夫だぞ)
(ふーん?)




2011.11.27

直訳すると、米人は帰れ!という意味だったはず。

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