今日くらい浮かれても





プルルルル…
電話のコール音がやけに耳に響く。
だんだん音が大きくなっているわけじゃない。
多分私の神経が敏感になりすぎてるだけ。

「無視なわけ、ないよね」

じゃあ仕事かな。
そう思って電話を切ろうとした瞬間、ガチャリと音がして。

「ど、うした」

電話なんて、珍しい。
多分走っていたのだろう、息を切らしている彼の声を久しぶりに聴いた気がして。
つい、意地悪を言いたくなってしまう。

「雨、降ってますね」
「あぁ、」
「クリスマスなのに」
「…何が言いてーんだよ」
「……逢いたい、です」

少し機嫌が悪くなってきたような彼が息を呑むのが聞こえてきて。
追い討ちをかけるように言葉を紡ぐ。

「取りに来て下さいよ、クリスマスプレゼント」

ご馳走もありますよ。
そう伝えれば、小さく"お前が作ったのか"と聞いてくるから。
つい、嬉しくなって笑ってしまう。

「もしかして今、顔真っ赤になってます?」
「………っ!」
「ふふ、のんびり来て下さいね」

彼は私の言葉に悪態をつきながらも歩いているようで、傘に雨が当たる音が電話越しに聞こえる。

「寒ィ…」
「あの、十四郎さん」
「あ?」

"メリークリスマス"
そう言うと同時に鳴ったインターホンに、勢いよくドアを開けた。




─今日くらい浮かれても─

(で、プレゼントって何だ)
(何だと思います?)
(お前に決まってんだろ)
(いや、希望じゃなくて)



2009.01.17

2011.04.26 修正


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