柏餅と君(修正中
─柏餅と君─
「眠ィな…。……ん?」
朝起きると、枕元には大量の柏餅。
見るだけで胸焼けしそうな量にうんざりしつつ、眠気でまだ回転の遅い頭を必死にまわす。
これを、こんなことをしそうな奴は…?
「オイ、何なんだこれは」
それでやってきたのは、なまえの部屋。
目の前の彼女は、だらだらと冷や汗を垂らしていて、明らかに動揺している感じが伺える。
『え?こ、これは柏餅じゃないですか…?』
「知ってんだよそのくれェ、」
問題は何で、俺の部屋にあるかだろォが。
低く言うと、びくりと肩を上げる彼女。
そして、小さく口を開いた。
『だって…土方さん、今日お誕生日じゃないですか』
だからプレゼントをあげたいなー、なんて。
そう思ったんです。
小さな声でそう言うと、ふるりと肩を震わせる。
「オイ…」
『…はい?』
彼女は、恐る恐る俺を見上げてくる。
その瞳は、案の定潤んでいて。
…クソ、
「調子狂うな…」
コイツは、人が一度しか言うことのなかった誕生日を覚えていて。
しかも、プレゼントを枕元に置くなんて。
「プレゼントなら直接、渡せばよかっただろ…」
それをしなかった理由なんて、知らねェ。
知らねェけど、いや、知らねェからこそ知りたくて。
「何で、直接渡さなかったんだよ」
どうしても知りたくて、つい強くなっていまう声音。
それにすらびびってしまうコイツが愛おしくて、つい頬が緩んでしまう。
『な、何で笑ってるんですかっ!』
かぁ…と顔を赤くする彼女に、可愛いと思ってしまったことに対し、俺も赤面した。
「あー、誕生日プレゼントってよ…」
お前じゃ、駄目か…?
つい言ってしまった俺を、真っ赤な顔をして見てくる彼女。
「いや、別に無理にとは言わねェから…」
自分で言っておいて、俺はどれほどヘタレなのだろうか、と思った。
それと同時に、困らせるのではないかとも思った。
彼女の優しい性格には甘えたくない。
そう思って、気にしないで欲しいと言おうとしたその瞬間。
『私も…好き、です!』
聞こえた声に、俺は唖然。
真っ赤に染まった頬とにやける口を見せないために、口元を手で覆う。
「両想い…かよ」
『…はい…っ!』
何のドッキリかと思ったが、なまえもそう言ったことだ。
偶然、俺の誕生日と重なったことにして。
5月5日は、俺にとってもなまえにとっても大切な日になった。
(知ってましたか?私は土方さんに一目惚れしたんです)
(…俺も一目惚れだったんだがな)
(え?)
(……何でもねェ)
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香保里さまリクエストの土方激甘です!
土方さんの誕生日ということで、今日書かせていただきました!
2008.05.05
夕凪
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