風紀委員長×会長
バレンタイン小話
「有難いが結構重労働だな…」
重い段ボールを持って歩いているのはこの学園の風紀委員長、黒滝龍斗である。
段ボールの中身は全てチョコレートで、龍斗はもうすでに段ボール4箱も自室に運んでいる。
やっとの思いで最後の一箱を運び終えると、疲れた体をソファーに沈めた。
するとインターホンがなった。
もう親衛隊なら懲り懲りだ、と朝から親衛隊に振り回された苦労を思い出しながら玄関の扉を開けた。
「…」
扉を開けた先に居たのは笹堵望、生徒会長で、何故かじっと足元を見ている。
「どうした?」
訳の分からない龍斗はそう望に尋ねると望は勢いよく顔を上げた。
「ん!」
「え、は?」
「だから、ん!」
意味の不明な事を言い出した望に龍斗は益々疑問符が増え、ふと視線を下にやると望が小さな箱を差し出していた。
その理由に気付くや否や龍斗は笑みを深くした。
「ま、上がれよおチビちゃん。」
半ば無理矢理望を部屋に招き入れた龍斗は望と共にソファーに座った。
「で、どういう風の吹き回しだ?」
「べ、別にお前の方が俺より貰ってる数が少ないだろうから笑いにきたんだよ。1個くらいやっても変わらないだろうからな!だだだから、別に、その…本命だとか、ちち、血迷っても考えんなよ!」
望は下を向いたまま言ったため表情は見えないが耳は真っ赤に染まっている。
それに気付いた龍斗は微笑んだまま望がくれたチョコレートを一つ口にした。
「ん、うまい。」
「ほ、本当かっ?」
龍斗が漏らした感想に望が素早く反応する。
「ああ、お前も食べるか?」
龍斗はクスッと笑って望に顔を近付ける。
鼻先がふれあい、唇がもうすぐ触れる瞬間―…
「おおおお、俺仕事あるっからっ!」
ドンッと龍斗を突き飛ばした望は顔をこの上なく真っ赤に染めて走り去っていった。
「あー…あと少しだったんだがなぁ…」
と言葉こそ悔しそうだが表情は笑みが絶えない。
机の上にある歪な形のチョコレートを眺めながら早くも一ヶ月先の事を考える龍斗であった。
お、ちょっと進展?
バレンタインっておいしいイベントだな^^
望がおバカというよりツンデレになってしまった…
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