キンコンカンコーン。

鐘の音を合図に、黒板にびっしりと文字を書く服部先生の授業が始まった。
しんと静まっている教室では、カチカチとシャープペンシルを押す音がよく響く。

そして、右隣からはポキポキとシャーペンの芯が折れる音が聞こえてくる。

右隣の席に座っているのは、想いの人である高杉君である。
そんな訳で、彼がノートをしっかりとれているのか…などという余計な事が無駄に気になって仕方がない。

ポキポキポキポキ。

一見リズミカルな音に聞こえ耳障りがよいようなものに感じるが、私にとっては心が騒つくものにしかならない。
というか、リズミカルに芯が折れるたびに高杉君の額に汗が増えていくのが気になって仕方がない。
拭ってあげたいけれども、そんな仲のいい関係ではないので拭ってあげれない。
くそ、何てもどかしいのだろうか。

そんな事を考えながらノートを必死に写し続ければ、服部先生はなんの躊躇いもなく黒板に書かれた文字を素早く消した。
ああああああ、と何人の生徒が心の中で悲鳴にならない叫び声をあげた事だろうか。

たっ、高杉君は大丈夫だろうか。
勢いよく隣を見れば、手をガクガクさせながらはんぱない量の汗を額から流している高杉君がいる。
相変わらず麗しい顔だけれども、表情からわかるように全然大丈夫そうではない。
しかし何て彼に声をかければいいのだ!

「後で私のノート写す?」とありきたりの事を聞くべきか!などと思うものの緊張し過ぎて、呂律が回らない上に声がうまく出なくてテンパっている高杉君に、私の行動は気づいてもらえない。

ど、どうしたもんだ。
そんな事を考えてる間も、高杉君の芯は折れているし、服部先生の授業も進んでゆく。
仕方がない。再び真っ正面を見つめ、カリカリとノートをとってゆく。



キンコンカンコーン。

再び鳴り響いた鐘の音と同時に、服部先生のチョークは今日の役目を終えた。
それと同時に右隣から聞こえたポキポキという音もしなくなる。
横を向けば、麗しい高杉君の顔がすぐそこにあった。


「のののノートをかかかかかかかか貸してくれねぇか」




ヘタレな貴方に恋してる


ゆう様に捧ぐ

200910331


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