魔術師は、濁音を響かせて這い上がる(シュウ視点)

外伝


 変な女だと思った。シャーナのくせに、堂々としていて、刀にも怯えない。その上、脱獄者とまでいくと、これはもう、常人離れしているとしか思えない。
「顔も性格も……こりゃ、男にはモテねぇな」
 持っていた蝋燭に明かりを灯し、その僅かな光で顔を覗き込む。木の洞で揺らめく光に照らされた顔は、それほど綺麗ではない。要するに並みの顔だ。
 しかし、本当にそれだけだったら、俺は間違いなく殺していただろう。しかし、魔術師だ。魔術師なんて、世の中に幾らでもいるが、俺に着いて来れる魔術師はいなかった。
 一体、何人の魔術師を斬り殺してきただろうか。脅しても、結局は逃げていく。逃げていく背中を斬る。苦しいなんていう感情は、とうの昔に捨ててしまった。しかし、仮にも着いてくるとか言った奴に裏切られるのは好きではない。
「手前は、俺に着いて来れるかな」
 少なくとも、今までのどの魔術師よりも、可能性は高い。しかし、まずは明日の朝、この魔術師が生き残るかどうかだ。
 刀で脅したところで、ついてくる女ではないのだから。
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