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階段の無い国


 リーファ・シャーナ・シュライゼ。明らかに危ない感じで、見た目も中身も怪しい男、シュウと共に旅することになってしまった魔術師。
 リーファは溜息を吐いた。気に入られてしまったいることは、間違いないだろう。この男は異様に上機嫌だ。
 別に、森の中をぼけっと歩いている今ならば、いつでも抜け出せるのだが、リーファは約束は守る主義である。第一、この男を野放しにしておくのは危険だ。それに、逃げたところで、こういう厄介な奴ほど、しつこいと決まっている。
 剣士としては一流らしい。兵士を、無傷で絶滅させたぐらいだ。その点では信頼できた。しかし、ある意味それが厄介だった。
 刃物を持った幼子は危険だ。リーファにとっては、この男はそれ以上に思えた。とりあえず、リーファの中で、シュウは人間ですらない。かと言って、動物にするのも、動物に迷惑に思えたが、少なくとも人間と部類に入れるよりは、遥かに良い選択であろう。
 シュウは真っ直ぐと歩いていた。しかし、リーファにはどこに行くかが分からなかった。
「どこへ行くつもり?」
「エーゼの町だな」
 知らない町の名前だ、とリーファは思う。牢獄で十年も過ごしていたのだから、然程不自然なことでもないわけだが。
「何をする?」
 そう尋ねると、シュウは振り返り、にやりと口元を歪めた。
「当たり前だろう。町の人間を全滅させる」
「私の話聞いていた?」
 次の瞬間、光魔術が炸裂したのは言うまでもない。



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