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行方不明の御妃様


 木々の狭間から差し込む朝日を浴び、リーファは目を覚ました。すぐ隣には、ミューシアが寝ている。あまりにも気持ち良さそうに寝ているので、リーファは口元を緩めた。
 木の上には、寝ていたはずの人間がいない。シュウは、夜、ふらりとどこかに消える。そして、帰ってきた時は、ミューシアが言うには、僅かな血の臭いと、香水の匂いがしているらしい。
 ミューシアの前では、どこに行っているんだろうね、とリーファはとぼけて見せた。女遊びに行って、確信はないが、おそらく帰りにその女を殺して帰ってきているだろう、などということを、可愛らしい小さな女の子に、誰が言えるだろうか。
 リーファは、シュウとの相互不干渉を約束していたため、気付いても放っておいた。間違っても、気付かない振りをしているわけではない。朝になったら帰ってくるわけだし、ミューシアもそれ以上はリーファに尋ねなかった。
 しかし、その日の朝は違った。シュウが帰ってこない。
「シュウ、遅いね。ミュウ、心配」
 ミューシアは、幸せそうに肉に齧り付いた後、そう言った。説得力はないのだが、ミューシアの中で、シュウが食べ物以下だということだけである。
「そうだね」
 リーファは、町の方角を見た。静まり返った森に、人の気配はなかった。


 ミューシアが、久しぶりに散歩に行きたいといったので、リーファは、あまり遠くには行かないようにすることと、お昼までには必ず戻ってくることを約束させた。
 シュウもミューシアもいない。リーファは、一人で町に行くことにした。



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