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美しい町


 リーファは、見えなくても良いものが見えてしまうことが多い。否、見えなくても良いものではない。見えるべきだが、見えない方が見る側としては楽なものが見えてしまう。
 しかし、旅の仲間はそうではなかった。
「そんなことないもん。ミュウ、そんなことないもん」
 ミューシアは、頬を膨らませて、手を振り回しながら、必死に主張していた。何がそんなことないのか、話を聞いていなかったリーファには分からないが、どうでも良いことである、というぐらいは分かった。
「そんなことないのならば、今すぐ崖っぷちから飛び降りてください」
 冷ややかな目を向ける堕天使の口元には、嘲笑が乗っている。もう、ここまで来たら、可愛らしさを通り越して救いようがないな、と思ってしまうリーファは、決して気が短い方ではないはずだ。
「手前ら五月蝿せー、黙れ。これ以上騒いだら殺すぞ」
 そして、刀に手をかけ、今にも斬りかかりそうな、一応最年長者。
 外国に来たというのに、注意力散漫以前に、いつもと変わらない旅の仲間に、半ばうんざりしながら、リーファはミューシアを抱き上げた。永遠と広がる海に目をやったのは、現実逃避では無いはずだ。

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