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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


「お前メンヘラのくせにメンヘラらしいことはしねえのな」
「そう?」

 メンヘラ。その自覚はある。精神は大抵不安定、めそめそ泣いている情けない姿も荼毘にはたくさん見られてきた。生きていくうえで薬は手放せないし、かといってそれで元気になるわけでもない。憂鬱と普通の間を行ったり来たりしている情緒不安定人間、それが私だった。

「リスカとかODはしないね。あとが面倒くさいから」
「あ?」
「破傷風とか嫌だしお風呂で沁みるし、ODはリスクとリターンが見合わないからやだ」
「へえ」

 自分から聞いてきたくせに気のない返事をして黙る荼毘。そういえば彼には言っていないけど、私にはもうひとつ特性がある。それは無意識のうちに性別問わずメンヘラを引き寄せてしまうことだ。メンヘラがメンヘラを呼ぶ悪循環。狙って引き寄せているわけではなく、気がついたらそうなっているので実に厄介だ。もしかしたらこれが私の個性……とはさすがに思いたくない。
それでも目の前にいる彼もそうやって引き寄せてしまった一人ではないかと思うことがある。それを口にすれば機嫌を損ねるだろうし、最悪焼かれる気がするので絶対に言わないけど。メンヘラだって命は惜しいのだ。