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「#年下攻め」のBL小説を読む
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 今日の弔くんはいつになく距離が近い。座っているときも、家事をしているときも、飲み物を取りにいくときですら私の背にぴったりとくっついている。彼が甘えたなのはいつものことだけど、今日は一段と甘えん坊だった。

「弔くん、どうしたの」
「どうもしないけど」
「何かあった?」
「さあ」

 僅かな隙間も許さないとばかりに向かい合う形で密着する身体。触れ合っている箇所からお互いの体温が溶けて混ざるような感覚に満たされていく。

「本当に思い当たることないの」

 弔くんの肩口に顔を埋めて微睡んでいると、不意に頭上から投げかけられる疑問。ぼんやりする頭を回して考えてみるものの、それらしい答えは浮かばない。

「うーん、ヒントください」
「……、今日の日付」

 今日は弔くんの誕生日……じゃない。記念日でもない。何かあったかなとしばらく考えて、ようやく私はひとつの答えに辿り着いた。

「あっ」

 そう、二月十四日。バレンタインデーだ。今の今まですっかり忘れていた。
弔くんにプレゼントをしたいとは思っていたけれど、彼がやってくるタイミングは正直に言うとよくわからない。食べてもらいたくてお菓子を作っても、急に会えなくなることだってざらにある。そういうわけで何を渡すのがいいかなぁと悩んでいるうちに仕事が立て込み、そのまま綺麗さっぱりバレンタインの存在を忘れてしまっていた。

「ごめん、バレンタインのこと忘れてた……」
「別に謝らなくていい」
「せっかく来てくれたのにごめんね。今度はちゃんと準備しておくから」
「俺は」
「うん?」
「今日が何でもない日でも会いに来るつもりだった」
「……」
「名前がいればそれでいい。他はあくまでオマケだ」

 耳元で密やかに紡がれた言葉が、沈みかけていた私の心を掬いあげる。その予想外の甘さに動揺して動けずにいれば「わかりやすいヤツ」と笑われて。それが何だか悔しくて「私も弔くんがいれば他には何もいらないよ」と囁けば、顔を赤く染めた二人ぼっちの出来上がり。