液晶画面の向こうで、巨大化したサメが別の惑星から来た宇宙人と、そいつらを退治しようとする人類と三つ巴の戦いを繰り広げている。これは最近配信が始まったばかりのB級映画だ。特に興味はなかったが、名前が「一緒に見たい」と言うのでこうして付き合ってやっている。俺を誘った張本人は人の膝を枕にして寝てやがるけどな。物語の序盤、主人公たちの恋愛模様がダラダラ続いている時点でこいつは意識を半分飛ばしていて、あれほど出番を待っていたサメが出る頃には完全に眠っていた。
「……人の気も知らねェで」
起きたらどうしてやろうか。小さく息を吐き、相変わらず滅茶苦茶なシーンが続いている画面に視線を戻した。
「あれ、」
気がつくと映画が終わっていた。勝己くんの膝枕で横になっているうちに寝てしまったらしい。大学生の主人公が彼女や友人カップルたちと海で長い間イチャついていたのは覚えている。あまりにもサメの気配がないので今回は期待外れだったかな、なんて思ったりもして。結局最後はどうなったんだろう。予告に出ていた空飛ぶ巨大ザメは生き残ったのかな。
「勝己くん、あの……」
「いい夢見れたかよ」
「お、おかげさまで」
おかしいな。勝己くんの笑顔が怖い。不穏な空気を感じ、体を起こして後退するもすぐさま詰められる距離。ち、近いってば。
「こっからは俺に付き合ってくれンだよな、名前」
「え、っと」
怪しい雲行きに身構える私の手を引いて、寝室に移動する勝己くん。抵抗する間もなく押し倒された視界には、天井と彼だけが映っていて。
「怒ってる?」
「別に怒ってねェ。……ただ、いいかげん俺を構えや」
「ん、」
噛みつくように塞がれた唇。口内を好き勝手に蹂躙する勝己くんの舌が、私の思考と理性を溶かしていく。
「勝己くん、すき」
キスの合間に零すと、熱を帯びた紅い瞳が満足気に細められて。ああ、その顔好き。私しか見られないであろう表情にたまらなくなって、勝己くんの首に腕を回して口づけた。
次の日、昨日の映画の内容がわからないままだと話すと勝己くんが簡潔にまとめて教えてくれた。文句を言いながらも最後まできっちり見ていた彼に思わず笑うと「何笑ってんだ」と頬を抓られた。