うちはの人々 | ナノ
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 雪がちらつく冬の日だった。その日も本家での集まりがあって、私以外の大人たちは大広間で宴会を開いていた。賑やかな声を耳にしながら、私はというと一人で別の部屋に閉じこもっていた。幼い頃は今よりもずっと人見知りで親戚たちの輪の中にはとても入っていけなかったから。静まり返った部屋で膝を抱え、何をするわけでもなくぼんやりしていると、唐突に襖が開いた。

「ここにいたのか、名前」
「……お兄ちゃん」
「腹減っただろ。向こうで一緒に食べよう」
「大丈夫。ここにいる」

 頑として動こうとしない私に兄さんは困ったように笑って「それじゃあ俺と握手しよう」と手を差し出してきた。

「やだ」
「やだってお前……ちょっと傷ついたぞ」
「だって握手したらそのまま連れて行くつもりでしょ」

 そう答えると目を丸くした兄さんに「名前は賢いな。バレたか」と頭を撫でられた。私は褒められたことが嬉しくて、少しだけ得意げになったのを覚えている。その後のことはぼんやりとしか覚えていないけれど、たしか兄さんに抱っこされて強制的に輪の中へ入れられたような気がする。

 向こうはきっともう忘れているだろうけど、あの時優しく手を差し伸べてくれた兄さんはいつもより少しだけかっこよく見えたんだ。

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