皿に積み上げられた山ほどの桜餅。軽く百は超えているそれを目の当たりにして、私は開いた口が塞がらないでいた。これほどの量を目にしたのは生まれて初めてだ。
「さあ、遠慮なく食べてね!ちゃんとおかわりもあるから!」
「あ、ありがとう……」
今日はお互いに任務もなかったので、私は蜜璃ちゃんと我が家でお喋りに花を咲かせていた。ちなみに例の桜餅は彼女がお土産に持ってきてくれたものだ。ちゃんと完食できるだろうかと若干不安に思いつつ、さっそく一個目の桜餅を頬張った。
そういえば最近は顔を合わせるたびに桜餅を貰っている気がする。私も好きだから嬉しいけれど、毎回手渡されるそれを少し不思議に思っていた。
「こんなに桜餅を食べてたら、私もそのうち蜜璃ちゃんと同じ髪の色になるかもしれないね」
「!! ……も、もしかして気づいてたの?」
「え? 何が?」
「あわよくば名前ちゃんも私と同じ髪の色にならないかなって思って、その、沢山桜餅を差し入れしてたこと……」
きゃあ!言っちゃった!蜜璃ちゃんは顔を赤らめながら照れている。なるほど、だからあんなに毎回大量の桜餅を……。
「全然気づいてなかったけど、そういうことだったんだね」
「……あの、迷惑だったかしら?」
「そんなことないよ。髪の色が変わるかどうかはわからないけど、もしお揃いの色になれたら私も嬉しい」
「本当? よかったぁ」
蜜璃ちゃんは毎日桜餅を食べ続けていたら今の髪色になったらしい。参考までに一日にどれくらいの量を食べていたのかを聞いたら「大体百七十個くらいね。八か月ほど経った頃に急に色が変わったのよ〜」と言う答えが返ってきて気が遠くなった。ひゃ、百七十個かぁ……。
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