暗闇の中、ふと目を覚ます。手元のスマホを見ると、まだ寝付いて二時間程しか経っていない。もう一度寝直そうかとも考えたけれど、目が冴えてしまってどうにも眠れそうにない。仕方がないので隣で眠る真島さんを起こさないようにベッドを抜け出し、リビングへ移動した。
「隣におらん思たら起きとったんか。今日はえらい早起きやな」
休日にまとめて見ようと思い、未視聴のままになっていたドキュメンタリー番組を見ていると、真島さんが欠伸をしながらリビングへやってきた。
「ちょっと眠れなくて」
「ほんでまた恐竜のドキュメンタリー見とんのか。好きやのぉ」
「知らない恐竜がたくさん出てきて面白いですよ。真島さんも気が向いたら見……えっ」
「なんや」
「寝ないんですか?」
水でも飲みに来ただけだろうと思っていたのに、真島さんは私の座るソファへ近づき、すぐ隣に腰を下ろした。
「名前を置いて一人で寝るわけないやろ」
「すみません、気を遣わせてしまって」
「別に謝らんでええ。わしが好きでやっとるだけや」
結局、窓から朝陽が差し込むまで二人並んでテレビを眺めていた。それでも明け方になると漸く私も眠くなってきて、いつの間にか真島さんにもたれかかった状態で寝入ってしまっていた。
「おはようございます……」
午後二時を過ぎた頃、寝室のベッドで目を覚ました。きっと途中で眠った私を真島さんが運んでくれたのだろう。リビングに顔を出すと、彼はまたドキュメンタリー番組を見ているようだった。一緒に見ていたときはまだシーズン1だったけれど、もうシーズン2になっている。もしかしてあれからずっと見ていたのだろうか。
「おはようさん。今日は夕方あたりまで寝とるもんやと思てたで」
「真島さんこそ、朝まで一緒にテレビ見てたのに早起きですね」
「まあな」
「しかもドキュメンタリーの続き見てたんですか」
「せや。ほんまおもろいなぁ、これ」
自分の好きな番組を真島さんが気に入ってくれたことが嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。このドキュメンタリーのシリーズは恐竜だけじゃなく古代生物や海洋生物の作品もあるので、これが終わったらそっちも勧めてみることにしよう。
なんてことはない、ありふれた休日の始まり。でもそんな彼との日常が愛おしくてたまらなかった。
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