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第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
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これの続き

「三橋ィ!」
「あ?」
「はい?」

 貴志と伊藤ちゃんとの帰宅途中、背後からの呼びかけに振り向けば、そこには転校初日に出会ったあの男性が立っていた。

「あれ、君はあのときの……」
「あ! お久しぶりです。先日はお世話になりました」
「いやいや、そんなお礼を言われるようなことは」
「なんだよ名前、今井と知り合いか?」
「ほら、前に言ったじゃん。迷子になったときに助けてくれた人」
「おい三橋。お前、彼女とどういう関係なんだ」
「どうって、家族だけど」
「!?」
「私と貴志、双子なんです」
「ふ、双子!? あなたのような大和撫子と三橋が双子……!?」
「わーはっはっは! こいつが大和撫子なわけねーだろ! 外じゃ猫被ってるだけ……痛ェ!」
「そんなに笑わなくてもいいでしょ!」
「今のはお前が悪いぜ、三橋」
「伊藤……お前まで名前の肩持つのかよ」

 外では猫を山ほど被ってるだの、家ではお菓子を独り占めするだのとぎゃあぎゃあ騒ぐ貴志を伊藤ちゃんに任せ、改めて男性に向き直る。

「三橋名前です。この前は慌てていて、ちゃんとご挨拶できなくてごめんなさい」
「こ、これはどうもご丁寧に。俺は今井勝俊です」
「今井さん、貴志と知り合いだったんですね」
「まあ知り合いというか、もはや腐れ縁というか……」
「もし貴志が何か迷惑をかけたら、いつでも言ってくださいね。懲らしめますから」

 ぐっと握りこぶしを作って見せれば、今井さんは優しく笑ってくれた。

「おい名前、さっさと帰るぞ! 伊藤がコーヒー奢ってくれるってよ!」
「誰も奢るなんて言ってねーだろ!」
「名前さん、あいつらが呼んでるぞ。行ってやれ」
「はい。あの、また今度お礼をさせてくださいね」

 今井さんに促され、賑やかな二人の元へ向かう。貴志が必死に伊藤ちゃんにコーヒーを奢らせようとしている姿を横目に、そういえば今井さんは貴志に何の用事があったのだろうと頭にはてなマークを浮かべた。

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