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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 そよそよ。草花が風に揺れている。今日は天気もよく、太陽の光が心地よい。昼寝をするには最適の空模様だった。


「フォスー?」

 草の上に寝転がり、空を見上げながら名前を呼ぶ。

「んー?」

 すぐ隣から気怠そうな声が返ってきた。頭だけを動かしてフォスを見ると、私と同じように寝転んで空を見上げている。

「起きてる?」
「寝てる」
「寝てたかー」
「名前ー」
「んー?」
「起きてる?」
「寝てるー」
「名前も寝てたかー」

 中身のない会話を続けながら目を閉じる。今にも寝落ちてしまいそうだ。

「ここにいたのか。フォス、名前」
「やば、ジェードだ」
「えっ、なんでここに」
「今日の仕事は済んだのか?」
「僕、仕事ないから」
「私も仕事ない」

 私たちには仕事がない。あるといえばあるが、それもまだ適正を見るための仮の仕事でしかなく、本職と呼べるものではない。

「いいから、ほら起きろ」
「どこ行くの?」
「先生の所だ。脱無職の良いきっかけになるかもしれないだろう」
「えー」
「えー」
「文句なら聞かないぞ」

 ジェードはそんな私たちを気にかけて、色々な仕事を試すように気を配ってくれている。過去にはレッドベリルの手伝いをしてみたり、アレキの資料の整理を手伝ってみたり、あれこれと試してはいるけれど、不器用で脆い私はどの仕事もまともにこなせなかった。フォスも私と似たり寄ったりで、闘うわけでもなく、かといって仕事に就くこともなかった。無職コンビの誕生である。

「名前」
「わかった」

 フォスと私の付き合いはそこそこ長い。だから言葉を使わなくても相手が何を伝えたいのか、目を見ればなんとなくわかるのだ。

「お前たち二人は仕事がないというが、まだ試していない仕事も……ってコラ! どこへ行く!」

 ジェードの隙をついて、そそくさと逃げ出した。こうでもしないとお説教が長くなりそうだったし仕方ない。上手く逃げ出せた私たちは「やったね」と笑い合った。


「はあ、まったくあの二人はどこへ……」
「ジェード、そんなに急いでどうしました?」
「ああ、ルチルか。実はフォスと名前を探している」
「あの二人ならクラゲを眺めていましたよ」
「そうか! ありがとう」



「水に映る僕も可愛過ぎる……」
「このクラゲも可愛いよ、フォス」

 うっとりと自分の顔に見とれるフォスと、ぷかぷか浮かぶクラゲをつつく私。平和だ。

「見つけたぞ二人とも……!」
「ジェードおかえり」
「どれだけ探し回ったと思って……いや、その話はいい。今度こそ先生の所へ行くぞ」
「えー」
「えー」
「"えー"じゃない」

 仕事をしていなくても先生は怒らない。人員が足りていない仕事もない。それなら無理に私たちが仕事をする必要はないと思う。もういっそどこまで無職を続けていられるか、という記録を更新していくほうが有意義な気がしてきた。というか、ある意味無職も仕事の一つじゃないか。何もしないことが我々の仕事。うん、発想の転換って大事。

「フォス、名前」
「先生」

 "無職"という新しい仕事の可能性に光を見出していると、背後から先生の声がした。

「ジェードをあまり困らせないように」
「はい」
「ごめんなさい」
「今日はルチルの仕事を手伝いなさい」
「はい」
「はい」

 というわけで、有無を言わさず仮のお仕事を与えられてしまった。無職を極めるのも楽じゃない。



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