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これの続き物

 名前の部屋にある本棚に、また新しい本が増えた。それも一冊だけじゃなく、結構な数だ。元々名前は読書が好きだから、本棚に本が並んでいるのはあたりまえの光景だ。だからきっと俺や前田以外は「また新しい本を買ったのか」くらいにしか考えていないはずだ。でも俺達は知ってる。どうして彼女が突然大量の本を買ったのか。その答えはひとつ、審神者の他に司書の仕事を始めたからだ。

 過去に生きていた文豪の魂を転生させ、侵蝕者と呼ばれる敵と戦っているのだと名前は言った。名前はアルケミストとして、そして帝國図書館の「特務司書」として働き始めたらしい。これは初期刀の俺と、近侍を務めている前田しか知らない話だ。

「芥川龍之介、尾崎紅葉、織田作之助……」

 背表紙に書かれた文豪の名を指先で辿る。それにしても凄い本の数だ。名前は真面目だから「彼らのことをもっと知りたい」と一気に本を買ってきた。前までこの本棚には刀剣関連の本しかなかったのに今は名だたる文豪の本も山ほど並んでいる。なんか、面白くないよなぁ。

「その栞、」
「これ? 貰ったんだ」
「文豪、に?」
「うん、秋声がくれたの」

 秋声。図書館で働く名前の助手を務めている男の名前だ。堀辰雄と徳田秋声の二人の名前は特に耳にする回数が多い。堀辰雄は本丸で言うところの初期刀で、徳田秋声は人手が足らなかった名前へ政府が与えたサポーターらしい。文学書を守るためとはいえ、俺たち以外の男が傍にいるなんて考えたくもない。

「……あまり遠くに行かないでよ、名前」

 名前を腕の中に閉じ込め、目を伏せた。あーあ、このまま誰の目にも触れない場所へ隠してしまえたらいいのに。

「清光?」
「寄り道してもいいけど、ちゃんとここに帰ってきて」

 不安になるんだよ。本丸に帰ってくる回数が減るたび、ここにいない時間が長くなるたび、もうこのまま帰ってこないんじゃないかって。帰ってきてくれるって信じてるけど、それでも不安は募っていくばかりだ。だからせめて今だけでも名前を独占させてほしい。他の世界の話も男の話もしないで、俺だけを見て、愛して。

「……俺のこと、きらいになった?」
「そんなわけないでしょ。大好きだよ」
「ほんと?」
「本当。ちなみに私の愛は重いから覚悟してよね」
「なにそれ。望むところだよ」



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