※二部ネタバレあり
私がしてきたことは全て無意味だったのだろうか。
破壊され蹂躙されたカルデアの光景を思い出し、ダヴィンチちゃんの最期を思い出した。
シャドウ・ボーダーに揺られながら、七つの特異点、そしてセイレムまでの特異点の記憶が蘇る。
あの場で、私以外に人理を修復できるマスターはいなかった。だから平凡な私がせざるを得なかった。だってそうしなければ、とっくに世界は終わっていたんだから。もし他の誰かが私と同じ状況に置かれていたならば、おそらくその誰かも私と似た行動をとり、人理を修復しただろう。
ロマニも、以前のダヴィンチちゃんも、もういない。頼れるサーヴァントたちの多くも座に還ってしまった。カルデアも破壊された。たくさんの人が死んだ。私がしてきたことは一体何だったのだろう。いつになったら、私は。
「……あ」
ふと、視界に入った聖杯。そうだ、これがあれば。それに手を伸ばすまでに、時間はかからなかった。
「……!………!!」
遠くでマシュが叫んでいる。ただ、何を言っているのかわからない。以前なら聞こえていたのかもしれないけど、今の私にはもう聞こえないみたいだ。泣かせたくなかった。でも、今の自分に彼女の涙を拭う資格はない。私のせいだ。私が傷つけた。
「名前、早く行きましょ」
聖杯の力によって召喚したメイヴに背中を押される。ここに召喚された彼女はカルデアで共に闘ってくれていたメイヴのようだった。久しぶりに出会った彼女は何も変わっていなくて、正直ほっとした。私の考えも責めるようなことはなく「いいじゃない。貴女と私だけの世界を作るのも楽しそうだわ」と笑った。
「ごめんね、マシュ」
届いているのか、いないのか。泣いているマシュに一言だけ告げて、メイヴの手をとった。
さよなら、愛していた世界。
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