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これのつづき

 このカルデアに召喚されているライダーは現時点で黒髭のみ。つまりライダーの力が必要になると、必ず黒髭と関わる必要が出てくる。

「……」

 彼の私室の前をうろうろし始めてどれくらい時間が経っただろう。種火を集めに行きたいから一緒に来てほしい、と言うためにここへ来たまでは良かったものの。ここから先へ進む勇気が出てこない。たった一言。「力を貸してほしい」と伝えればいいだけなのに。

 代わりに伝えましょうかとマシュは言ってくれたけれど、それは断った。仮にも私はマスターだし、それくらいはちゃんと自分の口から伝えたいと思う。いつまでもマシュや女性サーヴァントに頼ってばかりではいけない。
深呼吸を繰り返し、大丈夫、と何度も言い聞かせる。イメージトレーニングも繰り返し行って、さあ声をかけようと空気を吸い込んだ瞬間。目の前の扉が勢いよく開いた。

「む? 名前氏、拙者に用事ですかな?」
「! あのね、た、種火を……集めたくて、その」
「種火周回ですな。いいですぞ」

 最後まで言い切る前に用件を理解した黒髭は、意気揚々と前を歩いて行く。ああ、駄目だ。また今日もサーヴァントに気を遣わせてしまった。そんな自分が情けなくて、俯き加減で廊下を進む。もっと自然に話せるようになりたいのに、どうしてうまくいかないんだろう。じわりと目頭が熱くなった。

「名前氏が呼びに来てくれたおかげで、拙者のやる気も十分でござるよ。種火集め期待してくだちい」

 前を向いたまま、黒髭がデュフフと笑う。こんな私でいいのかな。少しでも彼に受け入れられているのだろうか。

「頼りにしてるよ」

 その広い背中に言葉をかけると、再びデュフフ、と彼特有の笑い声が返ってきた。


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