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「#年下攻め」のBL小説を読む
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これの続き

 例の踏切で出会った彼は見間違いだったのかもしれないと思い始めた頃、私はスクランブル交差点で再び彼を見つけた。あんなに目立つ風貌をしているのに、周囲の人間は誰も気がついていないのだろうか。一人くらい彼を気にかける者がいてもおかしくないのに、まるでそこに存在していないかのように人々は通り過ぎていく。不思議に思いながら遠目に眺めていると、またしても目が合った。けれど、彼は何事もなかったように視線を外して歩いて行ってしまう。

「待って!」

 今度こそ姿を見失わないように駆け寄って、彼の着物を控えめに掴んだ。少しだけ驚いていた様子だったけれど「どうかされましたか」と穏やかに答えてくれた。

「あの……あなたのお名前を教えて頂けませんか?」

 暫しの間を置いて、彼が口を開く。

「ただの、薬売りですよ」
「薬売り……?」

 "薬売り"。職業ではなく名前を聞いたつもりだったのだが、薬売りという言葉は驚くほど腑に落ちて、私は無意識のうちに「薬売りさん」と繰り返していた。

「お元気そうで、なによりです。名前さん」
「どうして私の名前……」

 その問いに返事はなく、それ以上の質問を遮るように薬売りさんが私の唇に人差し指をあてた。

「袖振り合うも、なんとやら、ですね」



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