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 マキマさん、マキマさん。私の口から溢れるのは彼女の名前だけ。辛い、苦しい、悲しい、助けてほしい。それらの感情は全て彼女の名前に変換されていく。ぼたぼたと涙を零しながら同じ言葉を繰り返す私を、マキマさんはやさしく抱きしめてくれている。

「辛いね」
「マキマさん、」
「大丈夫、ゆっくり息をして」

 何が大丈夫なのかわからない。今の自分が正常でないことは私が一番わかっている。それなのにマキマさんは大丈夫を繰り返すばかりで、壊れた頭はそれを救いだと錯覚する。

「大丈夫だよ、名前ちゃん」

 鼓膜から、触れ合っている箇所から、視覚から。マキマという存在が私を侵食する。彼女はまるで毒みたいだ。


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