長い夢を見ていた気がする。
目を開けると、見覚えがあるようでないような天井が見えた。ここはどこだろう。私は何をしていたのだっけ。
「名前」
聞き覚えのある声に頭を動かせば、こちらもまたどこかで見た男性が一人。
「…?」
返す言葉が見つからずに見つめていると、男性が私の方へ歩み寄ってきた。
「疲れているのはわかるが、ソファで居眠りするのは関心しないな。風邪を引くといけないから、寝るなら自分の部屋で寝なさい」
眠りから覚醒するように、徐々に記憶も蘇ってくる。そうだ、この人の名前は工藤優作。私の父親だ。どうして自分の親のことなのに忘れていたのだろう。まだ寝ぼけているのだろうか。体を起こし、頭に手をあてて深く息を吸い込んだ。
「相変わらず寝起き悪いな、オメーはよ」
「……新一?」
「なんだよ。その幽霊でも見たような顔は」
工藤新一。私の双子の兄。父親同様に、自分との関係を思い出しながら名前を口にした。ずっと一緒に過ごしてきた家族なのに、なぜ記憶がぼんやりしているのだろう。
「大丈夫か?顔色悪いぜ」
「わっ」
ぴたり。考え事をしていたせいで気づくのが遅れてしまった。私の額に新一の額がくっつけられている。慌てる私とは別に新一は至って冷静に「熱はないみたいだな」と呟いている。昔から風邪を引いたときはいつもこうしてくれていた。それなのにどうして私は今"恥ずかしい"と思ってしまっているのだろう。
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