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「#年下攻め」のBL小説を読む
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 夢を見る。どこか知らない世界で、私が生きている夢を。

 今いるこの世界とよく似ているが、夢で見る世界には悪魔が存在しない。概念としての悪魔や、創作としての悪魔は存在しているものの、コールタールが空中を飛んでいることもないし、直接悪魔と闘うようなこともない平和な場所だった。
知らないはずのその世界はどこか懐かしすくて、そんなはずないのに、もしかすると私はそちらの世界の住人だったのではないかと思うことがある。

「興味深い夢ですね」

 こうして改めてメフィストさんに「夢」だと言葉にされると、途端に実感が湧いてくる。私が見ているのは現実味のある、ただの夢だと。でも本当にそうだろうか。まるで思い出せと言わんばかりに繰り返し見る夢には、何か意味があるのではないかと思えてならなかった。

「つまり、名前はその世界こそが自分が本来存在するべき場所だと考えているわけですね」
「自信はありませんが、ここで過ごしているよりは違和感がないです」
「ただの夢だと一蹴するのは簡単ですが、私もその夢には興味があります」
「本当ですか!?」
「ええ。ですから、また夢を見たら私に話していただけませんか」
「わかりました。あの、変な話をしてるのに、ちゃんと聞いてくれて……ありがとうございます」

 てっきり聞き流されると思っていたのに、予想に反してメフィストさんは真面目に話を聞いてくれた。抱えていた不安がみるみるうちに和らいでいく。ずっと話すべきか迷っていたけれど、話をしてよかった。

「今夜はもう遅い。これを飲んだら寝なさい」
「今日は何ですか?」
「ハーブティーです。よく眠れますよ」

 メフィストさんはこうして毎日寝る前にお茶を淹れてくれる。どういうわけか彼の淹れたお茶を口にするとよく眠れるので、最初こそ警戒して飲まなかったけれど、最近は自分から強請るくらい欠かせないものになってしまっていた。

「……」

 体があたたまってくるにつれて思考が鈍くなる。早くベッドに行かないと。そこまで考えたところで、ぷつりと意識が切れた。


 気がついたらベッドに寝かされていた。多分寝落ちした私をメフィストさんが運んでくれたのだろう。
それにしても妙に頭が冴えている。やけにすっきりした気分だ。でも、おかしい。私は眠る前に何かについて考えていたはずなのに、それが何だったのか、さっぱり思い出せない。忘れてはいけない大事な何かがあったはずなのに。

「……?」

 だめだ。全然思い出せない。

「今日は早起きですね」
「……あ、メフィストさん」
 
 可愛らしい寝間着姿で現れた彼は、横になると私をぎゅうっと抱き寄せた。甘くて苦い香りが漂ってきてくらくらする。

「あの、昨日私が話したこと覚えてますか?」
「覚えていますよ。昨夜は新作のゲームの話ですっかり盛り上がってしまいましたね。遅くまで付き合わせてしまって、申し訳ありませんでした」
「他に何か話しませんでしたか?」
「最近実写化された映画の話もしましたね」

 言われてみればそうだったような、うーん……。

「起きるにはまだ早い。もう一度眠りなさい」
「……はい」

 次に目が覚めたら、ちゃんと全部思い出せるだろうか。メフィストさんの体温に誘われるがままに意識を手放した。

「何も思い出す必要はありませんよ。あちらのことなど、全て忘れてしまいなさい」

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