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 メフィストさんからの呼び出しは、ほぼどうでもいい用事で構成されている。なので基本的にはスルーしてしまって問題ない。いくら電話が鳴ろうとも、いくらラインの通知が届こうとも気づかないふりをしていればいい。そうすれば諦めるだろうと思っていた、のに。


「えっ!」

 身体がわずかな浮遊感に包まれた直後、寝転がっていたはずのベッドが理事長室のソファへ姿を変えていた。ここは自分の部屋ではない。急いで起きあがり、すっかり見慣れてしまった部屋を見渡して、自分をここへ連れてきたであろう張本人を視界に捉えた。

「何の用ですか、メフィストさん」
「用という程のものではありませんが少々お話でも、と思いましてね」
「呼び出すならせめて電話とか使ってくださいよ。心臓に悪いです」
「連絡を無視していたのはどこのどなたですか」
「うっ……」
「ちょうど宇治から取り寄せたいいお茶がありましてね。いかがです?」
「……いただきます」
「いつもそれくらい素直なら良いんですがね」


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