「だーれだ」
突然背後から現れた両手に目を塞がれ、視界が真っ暗になる。その声に聞き覚えがあるかどうかを判断するより早く、私は手に持っていた鞄を背後へぶん投げた。背後から現れる幽霊や妖怪は少なくないので、これはもはや条件反射的な行動だ。
「うおっ、危ねっ!」
攻撃と同時に手が離れていったのでくるりと振り返れば、私が投げた鞄を持った三郎が立っていた。なんだ、やっぱり三郎だったんだ。
「ナイスキャッチ三郎」
「いきなり鞄でぶん殴ってくる奴があるか!そんな子に育てた覚えはないぞ」
「私に殴るように教えたの三郎だよ」
「あっ、私か……」
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