「イズナ、誕生日に何が欲しい?」
「欲しいものはないけど、姉さんにお願いを聞いてほしい」
「私で叶えられる範囲ならいいよ。どんなお願い?」
「扉間と別れて」
「え?」
「今すぐ扉間と別れて」
「……」
「ねえ、お願い」
「そ、そう言われても」
「姉さん」
「そんな泣きそうな顔しないでイズナ」
「……」
「(そういえば最近はあまり構ってあげられてなかったし、寂しい思いをさせてたのかも……)」
「……」
「扉間と別れることは考えられないけど、もう少しイズナと過ごす時間も作るようにするからね」
「……本当?」
「本当」
「扉間に会う頻度も減らしてくれる?」
「……」
「……やっぱり、こんなこと言ったら困るよね」
「ぜ、善処!善処するから!泣かないで!」
「それじゃあ明日の誕生日はずっと一緒にいてくれる?午前中は扉間と会うって言ってたけど」
「わかった。大切な弟の誕生日だし、扉間も話せばわかってくれると思う。だから明日は朝から兄さんと三人でお祝いしよう」
「ありがとう、姉さん」
「いいのいいの、ってあれ?涙が……」
「もう止まったよ。目に入ってたゴミは取れたからね」
「えっ」
「明日が楽しみだなあ」
(後日、千手家にて)
「だからお前は甘いのだ。子供でも分かるような嘘に騙されおって……」
「返す言葉もございません」
「はっはっは、イズナは本当に名前が好きだの」
「兄者、笑い事ではない」
「む、すまん……」
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