※現パロ、社会人夢主と大学生サスケ
「あーあ、仕事なんて行かないでサスケと一緒にいたい」
隣でテレビを見るサスケを視界に捉えつつ、近くに置いてあったクッションを抱き寄せる。そろそろ仕事に行く支度を始めなければならない時間になっているが、体も気分も鉛のように重かった。
「馬鹿なこと言ってないで支度しろ」
「だって今日は日曜だよ。せっかくサスケとゆっくり過ごせると思ったのに。どうして今日に限って仕事なのか」
本来なら今日は休みだったのに、朝になって突然「出勤してもらえるかな?」なんて店長から連絡があったのだ。なんでも同僚が急に来られなくなったとかで人手が足らないらしい。別に普段の日なら「こんな日もある」と納得できただろう。でも今日に関しては別だ。久しぶりにサスケとお家デートするつもりだったのに!どうして今日に限ってこんなことに……!
「日曜日じゃなくても一緒に過ごしてるだろ」
「それはそうだけど。平日だとサスケは大学で私も仕事だし、二人でゆっくり過ごせる時間が短いじゃん」
「……」
「家から出たくない……」
あー、本格的に仕事行きたくなくなってきた。もうこのまま休んじゃおうかな。無理だけど。
「名前」
先程までテレビに視線を向けてばかりいたはずのサスケが、いつの間にか私を見つめている。その澄んだ瞳には、ムスッとした自分の顔が映っていて更に気分が落ち込んだ。せっかくサスケと一緒にいるのになんて顔をしてるんだろう。これなら「仕事なら仕方がない」と割り切っているサスケのほうが、私なんかよりずっと大人だ。
「ごめん、大人気なかったね。もう支度するよ」
そうだ、決まってしまったものは仕方がないじゃないか。いつまでもここで文句を言っていても何も変わらない。動きたがらない体を心の中で一喝し、ソファから立ち上がる。サスケに情けない姿を見せてしまったことを反省しつつ、身支度に集中することにした。
「見送りありがとう。なるべく早く帰るから」
「ああ」
玄関まで見送りに来てくれたサスケに笑顔を向けて、ドアノブに手をかけた。もうこうなったらとにかく仕事を早く終わらせてやる。それで帰宅したら今度こそサスケとのんびり過ごすんだ。待っててねサスケ!と気合いを入れてドアノブを握る手に力を込めた。するとドアが開くよりも早く、空いていた方の手を掴まれて体が後ろへと大きく傾く。
「な、どうかし……んっ」
振り向きざま、押し付けられた唇に呼吸を忘れた。戸惑う私を余所にサスケは遊ぶように唇を食んだり啄んでみたり、何度も角度を変えて唇を重ねてみたりと、息つく暇も与えてはくれない。
「……さ、すけ」
酸素を求めて口を開けば、すかさず舌をねじ込まれる。聞きたくなくても聞こえる水音と、時折サスケが漏らす吐息、そして口内で絡み合う舌になんだか変な気分になってしまいそうだった。これから仕事に向かわなければならないのに、身体はどんどん熱を帯びていく。キスの最中、少しだけ目を開けるとサスケと視線がぶつかった。熱を宿したその両目に胸が締め付けられる。私はサスケのこの瞳に弱いのだ。この瞳に見つめられたら、抵抗する気も何もかもを奪われてしまう。
「ん、ぁ」
理性が崩れるギリギリのライン。見計らったようなタイミングで唇が離れていく。助かったと思う反面、名残惜しいと思う気持ちがぶつかり合う。そんな心情を表すかのようにお互いの口からは唾液が糸を引いていて、やがてぷつりと切れた。
「お前が帰ってくるまで待っててやる。だから早く仕事終わらせて帰ってこい」
「……はい」
「顔、真っ赤だぜ」
「誰のせいだと思ってるの!こ、今度こそ本当に仕事行くからね」
「ああ。さっきの続きはまた夜に、な」
耳元で響く色気たっぷりの囁きに、私はそれ以上何も言うことができず、そのまま逃げるように部屋を飛び出した。後ろでサスケが笑っているような気がしたけれど、それを確認する余裕はない。とにかく職場につくまでにこの赤く染まっているであろう顔をどうにかしなければならない。
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