今日は朝から名前姉さんも兄さんもいなかった。アカデミーが休みだから修行に付き合ってもらおうと思っていたのに、二人共任務があるらしく、朝早くに家を出て行ったみたいだ。二人がいないのは少し寂しいけど、文句ばかりは言っていられない。とりあえず二人が戻るまでにアカデミーの宿題を終わらせてしまおう。それで二人が帰ってきたら、修行に付き合ってもらえないか頼んでみるんだ。よし、と気合いを入れ直し、俺は鉛筆を握りしめた。
今日は早朝からの任務だった。本当は断ってしまいたかったけれど、なんとか気合いで乗り越えてみせた。偉いぞ私。それというのも昨日の夕方、サスケくんに「名前姉さん、明日任務なの?そっか……」と寂しげな顔をされたことがずっと心に引っかかっていて、一刻も早くサスケくんに会いたかったのだ。
「お邪魔します」
任務の報告を終え、いつものようにうちは家を訪れていた。普段なら「おかえりなさい!」と元気いっぱいにサスケくんが出迎えてくれるのだけど、今日はその姿が見あたらない。部屋で勉強でもしているのかな。
「サスケくん、いる?」
ひょいと居間を覗けば、サスケくんが横になっていた。どうやら眠っているらしい。机の上には教科書や筆記道具が置いてあるので勉強していたようだ。眠るサスケくんを起こさないように静かに近づき、その隣に同じように寝転んだ。こうしてこの子の寝顔を眺めるのは久しぶりだ。その天使の寝顔に、任務の疲れも一瞬で吹き飛んでいく。今ならどんな任務でもできそうだ。もう行かないけど。
「目が覚めたら、一緒に遊ぼうね」
艶のある綺麗な黒髪を優しく撫で、私も眠ることにした。今朝の早起きのおかげで眠気がピークを迎えていた。もう限界。きっと目が覚める頃には、サスケくんも起きているだろう。
任務を終えて帰宅し、真っ先に見たものは気持ちよさそうに眠るサスケと名前の姿だった。玄関での出迎えがなかったので不思議に思っていたが、二人共寝ていたのなら納得だ。サスケと名前は向かい合うようにして横になっている。まだ暖かい季節とはいえ、風邪を引いてしまってはいけない。近くの部屋から薄手の布団を持ってきて、二人に掛けておいた。
「……」
気が緩んだせいか瞼が重い。仮眠くらいなら、と自分も横になる。真ん中にサスケ、サスケの左側に名前、そして右側に俺。目が覚めたら二人共驚くだろうな。容易に想像のつく光景を瞼の裏に映しながら、意識を手放した。
「……?」
宿題をしていたはずなのに、いつの間に眠ってしまったのだろう。時計を見ようと頭を動かせば隣で名前姉さんが眠っていて驚いた。起こさないようにゆっくり起き上がれば、反対側で兄さんも眠っている。二人共、いつ帰ってきたのだろう。
「……」
二人の寝顔を間近で見るなんて初めてだ。朝からの任務で疲れているだろうし、今日はこのまま寝かせてあげよう。しっかり昼寝をした俺はもう眠くないけど、二人の間から離れるのはなんだか勿体ない気がして、再び寝転んだ。
兄さん、姉さん、おかえりなさい。
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