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※学パロ

「制服はどうした、名前」

 背後から聞こえた低い声にびくりと肩が跳ねた。引き攣った顔で振り返ると、学年主任兼生活指導担当のマダラ先生が立っていた。今の私は上半身はぶかぶかのジャージ、下は制服のスカートという格好で、先生に見つかるのも時間の問題だと思っていたけれど、想像以上の早さで見つかってしまった。

「それが、その……」

 廊下を歩いていたところ、曲がり角の向こうからやって来た男子生徒とぶつかった。それだけならまだしも相手の手には飲み口の開いた缶ジュースが握られていて、ぶつかった衝撃でその中身の殆どが私の制服にかかってしまったのだ。生憎今日は体育もなく、代わりになるような服も持っていない。どうしようと途方に暮れていると廊下を通りがかった扉間先生がジャージを貸してくれることになり、今に至っている。

「扉間か……」

 扉間先生の名前を聞いた途端、マダラ先生の眉間に皺が寄った。この二人は教育方針や考え方の違いから色々と対立することが多く、職員室で言い合う姿も何度か見かけたことがある。だからと言ってここで扉間先生のことを隠すのは間違いなく悪手だ。あとでそれがバレたときの方がよほど怖い。

「ついて来い」

 どこに、という私の質問には答えず、マダラ先生はずんずんと廊下を進んでいく。すれ違う生徒たちの私を憐れむような視線が痛い。ただでさえ恐れられているマダラ先生に、ジャージ姿の私。どこからどう見てもこれから怒られるようにしか見えない構図だった。


 連れてこられた先は生徒指導室。私はマダラ先生が出してくれたパイプ椅子に座ってじっとしていた。さてこれからどんなお説教が始まるのだろう。そう身構えていたけれど、どうにも向こうにその気はないらしく、何でもないような雑談ばかりを振られていた。

「あの……怒らないんですか?」
「何をだ? 怒る理由がないだろう。まあ、強いていうなら……ジャージを借りた相手が扉間だったのはいただけないが」
「じゃあどうして私をここに、」
「親類と話をするのに何か特別な理由がいるか?」
「……」

 呆れた。単純に私と話がしたかっただけらしい。マダラ先生――ここでは敢えてマダラさんと呼ぶが、彼は私の親戚にあたる。昔からとても可愛がってくれている優しくてちょっと残念なおじさんだ。公私混同する悪癖さえなければ、といつも思う。

そのままマダラさんのペースに流されて話をしているうちに昼休みが終わり、教室に戻ると隣の席のリンに「大丈夫だった?」と心配されてしまった。一緒にお茶を飲んでお菓子を食べながら喋っていただけだよ、とはさすがに言えず曖昧に笑ってごまかすと、後ろの席のオビトが「あのジジイ、またかよ」と色々と察していた。

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