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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -
※チャラスケ注意

 目が覚めたらサスケがサスケじゃなくなっていた。何を言っているかわからないと思うが私も何が起こっているのかわからない。なんだこれ。

「寝起きの名前も可愛いな」
「寝てる間に頭でも打ったの?」
「頭は打っていないが、名前の美しさに心を打たれている」
「重症だ……」

 妙にキラキラしたオーラを放つサスケに頬を撫でられて全身に鳥肌が立った。普段のサスケなら絶対こんなこと言わないししないのに。本当にどうしたの。これは何か悪いものを食べておかしくなったとか、そんな生易しいレベルじゃなさそうだった。

「恥ずかしがる顔も可愛いぜ」
「恥ずかしがってないからこっち来ないで」

 話を聞いているのかいないのか、慣れた手つきで肩を抱こうとするので、私は急いでベッドから飛び下り「うちは返し!」と布団を被せてやった。とにかく誰か他の人に助けを求めよう。一人で今のサスケを相手にするのは無理だ。とりあえず一番頼りになりそうなサスケのお兄さんに連絡してみよう。あなたの弟さん大変なことになってますよ。


テーブルに置いてある携帯を取りに動けば、手が届く前に背後からサスケに抱きしめられてしまった。普段なら嬉しいはずのそれも、今は恐怖でしかない。

「先に謝っとくね。ごめん!」

 首周りに回されていた腕を掴み、そのままサスケを背負い投げた。マダラさんに教わっていた護身術がまさかこんなところで役に立つとは。しかし様子がおかしくても相手はあのサスケだ。地面に叩きつけられる前に体勢を整え、綺麗に受け身をとっていた。しかもウインクのオプション付きで。うざい。

「何か困っているのなら俺に言えよ。力になるぜ」

 背負い投げには一切触れず、サスケはどこから取り出したのか、一輪のバラを差し出してきた。

「やっぱりこんなのサスケじゃない!」

 近くにあったクッションを投げつけ、今度こそ携帯を掴んで部屋を飛び出した。もう知らん!しばらく一人で頭を冷やしてろウスラトンカチ!



「はっ!」
 
 目を覚ますとこちらを見下ろすサスケと視線がぶつかった。部屋を飛び出したはずが、私はいつものように自室のベッドに横たわっている。なんだ、あれは夢だったのか。恐ろしい夢だった。

「かなり魘されていたようだが大丈夫か」
「もう大丈夫。ちょっと怖い夢を見ただけだから」
「夢?」
「朝起きたらサスケの頭がおかしくなってて、早くお兄さんに連絡しなきゃと思……!?」

 ふと視界に入ったテーブルの上。その花瓶に生けられている一輪の花に血の気が引いた。あれはさっきサスケが持っていたバラ?もしかして、いや、でも、まさかそんな、

「部屋を飛び出したときに転んで気を失ったんだ。覚えてるか?」
「どうせなら忘れていたかった……」

 どういうわけか私の悪夢は継続中らしい。俺が責任を持って看病してやる、と手を握ってくるサスケに頭が痛くなってきた。お願いだから誰か嘘だと言ってくれ。

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