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これのつづき
マダラさんのせいで新刀剣男士どころではなくなり、全く気にしていなかったのだけど、先程の刀の鍛刀にかかる時間は四時間だったような気がする。仲の良い審神者友達によると、今回の新刀剣男士の鍛刀時間は四時間らしい。つまり今顕現されようとしているのは、その男士の可能性があるわけだ。普通に四時間待っても良かったけれど、一度気になるとどうにも他のことが手につかなくなってしまい、結局手伝い札を使うことに決めた。刀が光り始め、その眩しさに目を細める。一体誰が来てくれたのだろう。
「千手扉間だ。お前が今代の主か」
「せっ……!」
千手扉間。まさかたった一度の鍛刀でお目当ての刀のうちの一振りが来るなんて、マダラさん効果だろうか。マダラさんといえばキスの一件があったけど、あれは犬に噛まれたようなものだからノーカウントということにした。犬というか刀だけど。人間じゃないからセーフ。
「兄者は来ているか」
兄者とは今回実装されているもう一人の男士のことだろう。確か名前は千手柱間、だったと思う。
「まだです。これからお迎えできるよう、鍛刀するつもりです」
「そうか。これから宜しく頼む」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
ちょっと怖そうな人だなぁなんて思ったけど、扉間さんは意外にも友好的だった。差し出された手に手を重ね、握手を交わす。
「扉間さん、本丸の中を案内しますのでこちらへどうぞ……わぷっ」
ぽすん!いきなり目の前に現れた黒衣に思い切り顔をぶつけてしまった。なんだか嫌な予感がする。
「……扉間か」
「マダラ……貴様までここにいるとはな」
「お知り合いですか?」
この際マダラさんに抱き寄せられていることについては何も言うまい。というか、扉間さんとマダラさんの間に流れているこの不穏な気配はどうしたの。うちはと千手の仲が悪いなんて聞いてないぞ。
「案内はサスケにでも任せておけ」
「駄目です。案内は私の役目ですから離してください」
「離さん」
「駄々捏ねないでくださいよ……。あ、イズナくん!悪いけどお兄さん引き剥がして!」
鍛刀部屋が騒がしいことに気がついたのかイズナくんが来てくれた。どうしたのと首を傾げていた彼だったけど、その態度が急変する。あの穏やかなイズナくんが、まるで敵に対峙しているときのような視線を扉間さんに向けているのだ。まさかイズナくんに限って……とは思っていたけど部屋の空気は益々重くなる。待って助けて。
「兄さん、名前、行こう。案内は俺がサスケに頼んでおくから」
「いや、だから私が案内を……ちょっと!マダラさん下ろして!」
抱き寄せられている体勢から、ひょいと俵担ぎにされて部屋から連れ出されてしまう。まだ扉間さんに本丸も案内してないし話も全然できてないのに。
「扉間さん!あとでお部屋にお伺いしますね!」
どう足掻いても下ろしてもらえそうになかったので必死に叫ぶと、扉間さんは可哀相なものを見る目をしながら片手を上げて応えてくれた。もしかしてこれからずっとこの一触即発の空気が続くのだろうか。そんなの嫌すぎる。全員仲良くしろとは言わないけど、険悪な雰囲気を本丸内に広められるのは困るよ……。
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