※現パロ
暦の上ではもう春らしい。朝の情報番組のアナウンサーの言葉を思い出す。それでも外の空気は相変わらず冷たくて、まだ冬だと言われても納得できるような寒さが続いている。
「さっむ……」
肩に羽織っているブランケットを手繰り寄せ、顔を埋めた。若干寒さが軽減されたが、それでも寒いものは寒い。
「それ、いつも持ってるわよね」
「あったかくてお気に入りなんだ。冬は手放せなくて」
「へえ、いいじゃない」
私もそういうの買おうかなとココアを飲みながらサクラが笑った。その姿を横目に私もコンビニで買えば良かったと呟けば「飲む?」とあたたかいココアが差し出された。女神様がいる……とありがたく受けとると大袈裟ねと笑われた。サクラの笑顔眩しい超可愛い。その笑顔にどれだけ私が癒やされているかなんて、本人は全然気づいてないんだろうなぁ。
「早く飲まないと冷めるわよ」
「はーい」
「ねえ、もしかしてサスケくんに貰ったの?」
「違うよ、これはマダラさんが買ってくれたやつ」
「え!? サスケくん怒るんじゃない?」
「なんで?」
「なんでって……。彼女が他の男の人から貰った物を使ってるのよ?しかもよりによって相手がマダラだし」
「サスケなら別に気にしないと思うけど」
「はぁ、アンタねぇ……」
サクラは呆れたように肩を竦めた。でもサスケは私が男友達と仲良くしていても何も言わないし、これがマダラさんからのプレゼントだと知った所で「だからどうした」と一蹴して終わるだけだろう。でもそう言えばまたサクラからお小言を貰いそうだったので、私はそれ以上その話はしないでブランケットにくるまっていた。だから気がつかなかったのだ。私たちの近くに噂の当事者がいたことに。
「なに、サスケ」
「……」
授業を全て終えてサスケと並んで家路につく。ここまでは普段と何ら変わりないが、今日は少し違っていた。隣からやけに視線を感じるのだ。そしてその視線の先には、お気に入りのブランケットがあって。
「これ着てろ」
そう言うや否や、私の肩からブランケットが強奪され、代わりにサスケが着ていたコートを投げ渡された。
「急にどうしたの」
「いいから着てろ」
「コートのほうがあったかいと思うけど……」
「別にいい」
「じゃあお言葉に甘えて……わあ、サスケのコート大きいね」
好意に甘えて袖を通せば、ふわりとサスケの匂いがした。なんだかサスケに包まれてるみたい、なんて我ながら少々乙女チック過ぎるだろうか。
「……ってことがあってね」
あれから数日、用事で親戚のオビトの家を訪ねていた私は何の気なしにあの日のサスケの話を聞いてもらっていた。ちなみにあのブランケットはサスケが持って帰ったままなので手元にない。幸いなことにあたたかい日が続いているので問題はないけど、また寒い日が来た時に手元になければ困ってしまう。明日にでも返してもらえないか聞いてみなければ。
「そのブランケット、誰かからの貰い物なのか?」
「うん、マダラさんに貰った」
「そういうことか」
「何がそういうこと?」
「要するに、妬いてるんだろう」
「サスケが?」
「そうだ」
「あのサスケが妬くなんてちょっと信じられない」
「そういうものなんだよ」
だからわかってやれ。そう言って頭を撫でられた。まさかサスケが妬いていたとは。その発想はなかった。サクラが言っていたことは正しかったのだ。
「気をつける」
「ああ」
オビトの助言を受けて、サスケの前であのブランケットは使わなくなった。その代わり、今はサスケと一緒に選んで買った新しい物を羽織っている。
「ふふ」
「何がおかしい」
「サスケが好きだなーって思っただけ」
「……そうかよ」
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