本日は二月十四日、乙女の一大イベントであるバレンタインデー当日だ。まあ私にとって今日は「沢山チョコが食べられる楽しい日」くらいの認識だけど、幼なじみの彼らにとってはどうだろう。幼い頃からモテモテのうちは兄弟にしてみれば、今日のような日は面倒なだけかもしれないなぁ。毎年両手で抱えきれないくらいチョコを貰うし、告白される回数も桁外れだ。そのためバレンタインの日は酷く疲れた顔をして帰ってくるのがお決まりのパターンになっており、毎年モテることの大変さを身を持って私に教えてくれている。
「サスケおかえり。今年も大量だね」
「どうしてお前が家にいる」
「回覧板持ってきたの。で、ミコトさんにお留守番を頼まれたからのんびりしてた」
予想通りサスケはうんざりした顔をしていて、持っていた大量の紙袋を乱暴に机の上に置いた。その中には想像していたよりもかなり多め、一言で言えばえげつない量のチョコが入っていた。あまりの光景に私の口からは無意識に「うわぁ……」と声が漏れる。ここまでチョコがあると羨ましいとかそういう次元を通り越してしまう。しかもサスケは甘いものが駄目なのでこんなに沢山貰っても困るだけだろう。なんだかちょっと気の毒に思えてきた。頑張れサスケ。
「そうそう、私もサスケに渡したい物があるんだよ」
「甘いものならいらねえ」
「いや、違うから」
私が机の上に置いたのは、チョコではなく今朝収穫したばかりのミニトマトだ。以前母がどこかから種を貰ってきたことがあり、それを私が気まぐれで育てていたのだけど、これが見事に実を結んだのだ。今日はたくさん甘いものを食べるだろうし、口直しにでも食べてくれたらと思い持ってきていた。
「いらない？」
「……いらないとは言ってない」
「食べたら感想聞かせてね」
「ああ」
心なしかサスケの表情が和らいだような気がする。トマト効果凄い。
「義理トマトだよ」
「義理かよ」
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