※現パロ
テレビから聞こえてくる声に、ほう、とため息をついた。どうしてこんなに素敵なんだろう。
「なんでこんなに良い声なのかな。ずっと聞いていられる」
「珍しく映画に集中していると思えば目的は声優か」
「そう、この声優さん凄く好きなの」
元々は声優さんの吹き替えが目当てで見始めた映画だけど、これが結構内容も面白い。私の予想を良い意味で裏切り続け、気がつけばすっかり映画の世界に魅了されていた。
「……」
「……」
「……」
「ひっ」
ふっと耳に息を吹きかけられて思わず背筋が伸びた。私を抱きかかえて座っているマダラさんを見れば「どうした?」なんて白々しい返事が返ってくる。追及しても無駄なことはわかっているので、気を取り直してテレビに向き直る。
「……」
「……」
「……」
「や、なにっ……!」
映画に集中したいのに背後から耳を甘く噛まれて意識が逸れた。なんとか画面に意識を戻そうとするものの、マダラさんの舌は遠慮なく耳を弄ぶ。噛んだり、舌を這わせたり、そのたびに背筋がゾクゾクして声が漏れた。
「マダラさ、映画見てる、から、ぁっ」
「わかっている。オレのことは気にせず見るといい」
「ぁ、そんなの無理……んんっ」
マダラさんの細い指が、するりと服の下へ潜り込む。素肌を撫でる指の冷たさとは逆に、私の身体は自分でもわかるくらい熱を帯び始めていた。
「テレビ切るから、待って」
私の言葉にマダラさんの動きが止まった。抱きかかえられているので逃げることはできないけど、テレビを切る間くらいは待ってくれるらしい。近くに置いてあったリモコンを手にとり、ひと思いに電源を切る。映画の続きは凄く気になるけど、それはまた後にするしかなさそうだ。
「もう見ないのか?」
「この状況で見られるわけないでしょ。録画してるから続きは明日」
「そうか」
「……これ以上見ていてもマダラさんに邪魔されそうだし」
恨めしそうに見つめる私など気にも介さず、マダラさんは私を軽々と抱き上げ、ベッドのある寝室へと歩いていく。
「文句ならベッドの上で好きなだけ聞いてやる」
「ちなみに拒否権は」
「あると思うのか?」
「……なさそう」
まず逃がしてくれないだろうし……。何も言わずに横顔を見ていれば、こちらの視線に気づいたマダラさんにそっと唇を塞がれた。
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