※ダイハード4.0パロ
深夜三時。マンションの駐車場に停めてある車内で、私はオビトと世間話に花を咲かせていた。本来ならとっくにお互いの家に戻っている時間だけど、オビトともう少し一緒にいたい私が、あれこれと話を振って帰宅を先延ばしにしていたのだ。そんな私の心中を察しているのか、オビトも何も言わずに話に付き合ってくれている。本当に私にはもったいないくらいの優しい彼氏である。
ふと会話が途切れた瞬間、オビトと視線が交わった。あ、キスされそう。そう思ったときには既に唇が触れ合っていて目を閉じた。
「……名前」
「ん、オビト」
口内に舌を差し込まれ、息が上がっていく。オビトの舌に応えるように必死に舌を絡めれば、粘着質な水音が耳に届いて顔が熱くなった。一度唇が離れ、再び重なろうとした刹那、バン!と音を立てて乱暴に車のドアが開いた。
「おい、出ろ」
開いたのはオビトが座っている運転席側のドアだった。そしてドアを開けた人物はというと、オビトを掴むと無理やり車の外へ連れ出している。不審者かと慌てたが、よく顔を見てみればそれはとても見知ったもので、私は大きな溜め息を吐いた。
「お前誰だ」
「女が嫌がってるだろう」
「ちょっと、マダラ!」
車から下りたオビトと腕組みをしているマダラ、そして私も急いで車を下りて傍に駆け寄った。
「呼び捨てはやめろと言ったはずだが」
「今はそんな話をしてる場合じゃないでしょ!」
「おい、こいつの知り合いか?」
「喧しい。関係ない人間が口出しするな」
「パパ!やめてって言ってるの!」
そう。この見覚えしかない人物とは私の実の父親、うちはマダラである。
「パパ……?父親は死んだと言っていなかったか?」
「何だと?俺は死んだことになっているのか?」
「……ちょっと言い方が大げさだったかもしれない」
「で、この男はお前の恋人なのか?」
「そう。そんなことより!ここで何してるの」
「お前が電話にも出ないし、かけても来ないから心配して顔を見に来たのさ」
「それはパパと話したくないだけ」
「今度は何で話したくないんだ」
「何で、って言った?リストにでもしようか?大体今日のこれは何なの?私を尾行したりして」
「別に尾行はしていない」
「しかも恋人を車から引きずり下ろすなんて信じられない!」
「少し落ち着け」
「これが落ち着いていられるわけないでしょ!?ほんと最低!」
「まあ……オレも悪かった。お前の恋人を無理やり引きずり下ろしたことは謝る」
いくら「悪かった」と言われても、今更はいそうですかと怒りは収まらない。せっかくオビトと良い雰囲気になってたのにもうめちゃくちゃだ。
「ごめんなさい、今夜は二人とも帰って。疲れたからもう寝るわ、一人でね」
オビトには申し訳ないけど、この状況で再びあの甘い雰囲気には戻れない。見たくなかった父親の顔も見てしまったし気分も最悪だ。今は少しでも早くここを離れて一人になりたかった。
「ああ、一人で寝るのは賛成だな」
それはいいと呑気に相槌をうつ父親の姿に、悪態をつく気力も沸かなかった。
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