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テーマ「推しとの恋」
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 私は今、マダラさんの足の間に座った状態でこたつに入っている。最初は一人で入っていたのだけど、途中でマダラさんが現れて私を後ろから抱きかかえるようにしてこたつへ乱入してきたためだ。他の所が空いてるのだからそっちに入ればいいのにと思ったけど、何を言っても無駄だろうから気にしないことにした。

「やっぱり冬はこたつに限りますね」
「食べるか?」
「いただきます」

 口元に差し出されたのは、冬の定番であるみかんだ。丁寧に皮の剥かれたそれを断る理由があるはずもなく。遠慮なく口に含めば、みかん特有の甘味がじわりと広がっていく。

「どうだ」
「甘くておいしいですよ。マダラさんにもあげますね」

 こたつの上に置いてあるみかんを手に取り、私も同じように丁寧に皮を剥いて差し出した。

「どうですか?」
「美味いな」
「ふふ、それは良かった」
「……」
「もう一個食べます?」

 まだ沢山ありますよ、と振り返れば途端に額へ唇が触れた。突然の事に驚いて固まっている私とは対照的に、マダラさんはゆるりと口角を上げて笑んでいる。

「みかんよりお前が食べたい」
「朝っぱらから何を言ってるんですか。みかんで我慢してください」
「名前」
「そんな顔しても駄目なものは駄目です」

 納得したのかしていないのか定かではないが、とりあえずは思い留まってくれたらしい。マダラさんは無言で私の肩口に顔を埋め、静かに息を吐き出した。どうやら少しだけ機嫌を損ねてしまったようだ。

「マダラさん、みかんが食べたいです」
「そこにあるだろう」
「それはわかってます。でもマダラさんに食べさせてほしくて。駄目ですか?」
「……」
「マダラさん」
「……口を開けろ、名前」

 マダラさんはゆっくりと頭を上げて、先程と同様にみかんを剥いてくれた。機嫌も少しばかり直っているような気がする。

 差し出されるみかんを咀嚼しながら、私の頭には先日テレビ番組で見た親鳥に餌付けされる雛の姿が浮かんでいた。そしてそれがあまりにも今の自分と重なっていて、思わず笑ってしまった。

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