※現パロ
深夜二時。静まり返ったリビングの片隅で、私はカップラーメンを食べている。普段は食べられないこともあって、その味もまた格別に感じた。
普段食べることができていない原因は、マダラさんだった。彼はインスタント食品を好まない。食品添加物がどうとか栄養がないとか言って口にしようとしなかった。それだけならまだしも、問題なのはそれを私にも強要するところだ。私が食べようとすれば容赦なく捨てるし、いかに身体に悪いかという話を延々と聞かされることになる。なのでカップラーメンが食べたくなったときは、今日のようにマダラさんが眠りについた隙を見計らって食べるしかなかった。
「何食ってるんだ」
「!?」
突然の呼びかけに驚き、私はあろうことか容器から手を離してしまった。咄嗟に床に散らばる無残なラーメンを想像したが、声をかけてきたオビトが素早く反応してくれたおかげで、なんとか事なきを得た。ナイスキャッチ、オビト。
「驚かさないでよ、オビト」
「勝手に驚いたのはお前だろう」
「…」
「ジジイに見つからないように気をつけろよ」
手渡されたラーメンを再び啜っていると、呆れた表情のオビトと視線がぶつかる。
「オビト、あーん」
「は?」
「いいから、あーん」
麺を掬い、オビトに近づける。少しの間何かを考えていたみたいだったけど、やがて考えるのをやめたのか、ぱくりと箸に口をつけた。
「美味しいでしょ。深夜のカップラーメン」
「まあ、嫌いじゃない」
「よし、これで私たちは共犯だね」
「はあ、そういうことか」
「もしマダラさんが来たら匿ってね」
「今回だけだぞ」
また呆れたようにオビトが溜め息をついたけど、そんなことはもう問題じゃない。いくら呆れられようとも、私達が共犯になった事実は変わらないのだから。
「もう一口食べる?」
「ん」
静かな部屋に、麺を啜る音だけが響く。一人で食べるのもいいけど、やっぱり誰かと一緒に食べるほうが好きだなあ。そんなあたりまえのようなことを感じた夜だった。
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